第85話 BOYS

story teller ~四宮星羅~


 優希くんは最近、架流さんと遊ぶことが多い。

 なんでも、スマートでかっこいいと言っていて、憧れているらしい。私には何を考えているのかよくわからない人に見える。いいの人なのは分かるけど。


「最近、架流さんの口調真似してるでしょ?」


「わかる?あの話し方カッコイイよね〜」


 私が隣を歩く男の子に聞くと、目をキラキラさせてそう言ってくる。

 架流さんに影響を受けているのか、優希くんは架流さんの軽口のような口調を真似て話すことがある。

 私的には前の優希くんの方がよかったが、本人が憧れてやっているのであれば、それを無理やりやめさせていいものか迷う。


「そう?私にはあの話し方の良さが全然分からないんだけど」


「なんで!軽い口調なのに、本質を捉えてたり、真面目な事言うのがかっこいいんだよ!」


「でも、優希くんは口調だけで、別に言うことは普通じゃん」


 私がそういうと、えー頑張ってるのにと落ち込んだ様子を見せる。

 少し、申し訳ないことをしたかと思い、ごめんと伝える。


「いいよ、思ったことをズバッという星羅ちゃんも好きだよ」


「うざい、キモイ」


「そんな〜・・・」


 架流さんの真似をして、カッコつけようとしたのだろうが、似合ってない。

 今の優希くんを見て、なんとなくわかった。

 あれは架流さんが言うからこそ、かっこよく見えるのだろう。


「私はいつもの優希くんの方が好きだよ?優希くんはそのままでかっこいいから、無理にカッコつけなくていいんだよ」


 私の素直な言葉に、優希くんは照れて顔を隠してしまう。

 この人はほんとかっこよくて可愛いな。


 ******


story teller ~四宮太陽~


('堅治' たまに男だけで遊ぼうぜ)


 金曜日の夜、そんなメッセージが入り、早速次の日に遊びに行くことになった。


 俺と善夜は家が近いため、先に合流し、駅に向かう。

 少し待つと、堅治が改札から出てきた。


「おまたせ。だいぶ待たせたか?」


「そんなに待ってないから大丈夫だよ」


 合流したあとはそのまま歩き出す。

 特になにをすると決めているわけでもないので、ただただ雑談しながら、目的地もなく進む。


「春風さんとは順調か?」


「うん、順調だよ。特になんもなく平和って感じかな」


「はぁー、そうか」


 問いかけに返答すると、堅治はため息を吐く。

 なにかあったのだろうか。


「何かあったの?」


「昨日ゲームしててさ、涼にメッセージ返すの忘れてたんだよ。そしたら拗ねて、今日は1回も返信がこない」


 なるほど、それでため息か。

 なんとなく思ってたけど、主導権を握っているのは冬草さんなのだろう。


「2人はそういうのないと思ってた」


 善夜の言うことはわかる。2人は常に仲良しって感じでそういうのとは無縁だと思っていた。

 常にイチャイチャしてるし。

 善夜も俺と同じことを思ったようで、そのまま口に出す。


「常にイチャイチャしてるのに、そんなこともあるんだね」


「常にイチャイチャしてねぇよ!?」


 堅治は顔を赤くして否定しているが、俺たちからすると、ところ構わずイチャイチャしているバカップルに見える。


「そ、そんな事より、善夜は夏木さんとどうなんだよ」


「ボクと夏木さん?」


 堅治は話題を変えようと、善夜に話を振る。

 善夜はうーんと少し考え、照れくさそうに話す。


「ちょくちょく遊びには行ってるけど、進展はなしかな」


「遊びに行ったりしてたんだ」


 遊びに行ってるとは知らなかった。

 夏木さんからも善夜からもそんな話は聞いたことない。


「うん、なんか春風さんと冬草さんに気を使って1人で暇してるらしくてさ、誘ったり誘われたりで放課後とかに遊びに行ったりするよ」


 ってことは結構いい感じなのでは?

 と思ったが、そうでもないようで。


「でも少し前に2人で遊んだ時、夏木さんの元カレって人に会ったんだよね」


「元カレ?」


「うん、向こうから声掛けてきて、また仲良くしたいって言ってた。連絡先交換したいってその人は言ってたけど、夏木さんは断ってて、でもなんか寂しそうだったんだよね」


 そういう善夜も少し寂しそうに見える。

 そりゃ好きな人の元カレと鉢合わせしたら、嫌な気持ちにもなるよな。


 夏木さんの元カレの話も気になるが、善夜の事も考えると、これ以上話を広げない方がいいかもしれない。

 俺と堅治は目を合わせて、話題を変えるのだった。

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