第205話 お金を作る方法
story teller ~葛原未来~
加藤を前にして小さく縮こまっている九十九の両親を見下ろしながら、腰に手をあてる。
あの裏切り者が妹を連れて逃げるのは可能性の1つとして考えていたのでそれほど驚かない。
なんとなく太陽くんか横山を頼ったことも予想できる。
「それで?返済の期日はいつなんですか?」
加藤が見窄らしい夫婦に聞くと、2人は明後日ですと小さく答える。
加藤は九十九の両親から奪った財布の中からクレジットカードを何枚か取り出す。
「キャッシング枠はいくらあるんですか?」
「・・・もう残ってません」
「私から借りた金でキャッシング枠の返済に充てたんじゃないんですか?」
すみませんと謝る夫婦。きっと返済して枠が戻った瞬間に再度キャッシングしたのだろう。バカな人たちだ。
「別に私は闇金でもヤクザの取り立てでもないので返済が遅れること自体は構いませんし、私に返すのが遅れても個人間のやり取りなのでブラックリストには載りませんが、カードが使えなくなるのは困りますよね?」
優しく問いかけるように加藤が聞くと、はいと旦那の方が言う。
「ショッピング枠はいくら残ってますか?」
「たぶん、20万くらいは残ってるかと・・・」
「わかりました。まずはキャッシングの返済をリボに変更してもらって下さい」
旦那はわかりましたと言うと、加藤の指示に従い、すぐにカード会社に連絡を入れる。
15分ほどで手続きが終わり、毎月の返済が少し減ることで気持ちが軽くなったのか、夫婦の顔色がよくなった様に見える。
「ではもう1つ、今すぐお金を作る方法を教えます。ただし、条件があります」
「条件・・・ですか?」
「はい。あなた方の娘、真昼さんを必ず連れ帰ります。なのであなた方は彼女を絶対に風俗で働かせてください。そうすれば彼女は学校をやめ、学費もかからなくなり、それどころか売り上げで生活水準も上がるはずなのでお2人にとってデメリットはないはずです」
実際、真昼を風俗で働かせたところで生活が豊かになる事はないだろう。彼女がNo.1風俗嬢にでもなれば話は別だが、そんな簡単な世界ではないだろうし無理な話だ。
それでもバカな夫婦は加藤の言葉に目を輝かせ、希望が見えたとばかりに喜びが全身から溢れ出ている。
「それで、今すぐお金を作る方法というのは?」
息を荒くして座ったまま前のめりに聞いてくる2人に、加藤はニヤリと笑ってスマホで表示したサイトを見せる。
「ここでショッピング枠を現金化してください。還元率は・・・そうですね。特別に税抜き75%にして欲しいと私の方からお願いしてみます」
「75%っていい方なんですか?」
「本来現金化というのは60%が相場ですから、だいぶいい条件ですね。20万円のショッピング枠を使った場合、ざっくり13万6〜7千円振り込まれますね」
わたしにはそういう話はよくわからないが、それでも加藤の悪い笑顔を見るとその条件が悪い事くらいは理解出来た。
だが、金を貸してくれ、毎月の返済を少しでも減らすよう指示し、更には今すぐ金を作る方法まで提案してくれた加藤は、夫婦に取って神様にでも見えているのだろう。
加藤のセールストークにまんまとハマっている事にも気づかず、加藤さんが言うならほんとにいい条件なのよとか言ってしまっている。
「では、先に私から連絡しておきますので10分くらいしたら電話してくださいね。加藤の紹介と言えばスムーズに対応してくれるはずですから」
ここでの話は終わったと、加藤は玄関から出ていく。
わたしもそれに続き、加藤の車の後部座席に乗り込む。
「なにか見つかったかい?」
「いいえ。良さげなものはなにもなかったわ。あの旦那にも抱かれるのも遠慮したいし」
「そうか。じゃあこっちで適当に女性を紹介しておくよ。絶対に裏切らない駒にする為に」
「お願いね。・・・裏切った九十九には地獄を見せるわ。両親にもっと借金作らせて、妹は風俗嬢。家庭崩壊させてあげる」
「はははっ。君は私よりよっぽど恐ろしいよ。ほんとに高校生か疑ってしまう」
そう言いながら加藤は車のエンジンをかけ、次の目的地に向けて走らせる。
これから向かうのは、とある高級レストラン。
本来なら高級レストランでの食事なんて心が弾むものだが、今は億劫でしかない。
なぜなら加藤の学生時代からの付き合いの男性も来るらしいからだ。
なんでわたしがおっさん2人と食事をしなければならないのか。というよりも、なぜ加藤はわたしを連れていきたがるのか。全くもって謎だ。
はぁとため息を吐いて窓の外を眺める。
※※※
ゆとりです。
いつも私の作品をお読み頂きありがとうございます。
昨日は1日ゆっくりお休みさせていただきました。
喉の痛みはまだありますが、熱は下がり、体のだるさもほぼ無いため比較的元気になりました。
今日から投稿を再開したいと思いますのでよろしくお願いします。
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