第51話 家族会議?

story teller 四宮太陽~~


 今回の事を母さんに話す前に、春風さんと話し合い、母さんには星羅の話だけを伝え、葛原が関わっている可能性があるということは、伏せることにした。

 理由は2つあり、1つはまだ俺たちの想像でしかないということ。もう1つは母さんも葛原の事を知っており、悪い印象しかない。その為、まだ俺たちの想像でしかないにも関わらず、必要以上に心配し、逆に話を大事おおごとにしてしまう可能性もある。

 そうなると星羅も不安になり、俺たちの予想していない行動を取るかもしれない。

 まずは、俺たちで情報を集めて見ることにした。

 母さんに伝えない以上、星羅にも今は黙っていることになった。


「星羅、入っていいか?」


 俺は星羅の部屋をノックしながら声をかける。


「いいよ」


 扉を開けると、星羅はベッドに座り、背中を丸めて小さくなっている。


「別に怒らないから心配しないでくれ」


「うん、ありがとう」


「春風さんから話は聞いた。嫌かもしれないが、お金が関わってくる以上、母さんにも話をしないといけない」


 出来れば話したくなかったのか、やっぱりそうだよねと覇気のない声で答える。


「別に彼氏と別れろって話じゃないし、帰る時間を守って、自分たちのもってるお金の範囲内で遊べば、俺はなにも言わないから。母さんには今から怒られるかもしれないけど、俺もなるべくフォローはするからさ」


「ありがと」


 そういうと星羅はベッドから立ち上がり、ゆっくりと部屋を出る。

 一緒に1階に降り、リビングに入ると、母さんはご飯を作り終え、テレビを見ていた。


「月ちゃんと話は出来た?」


「うん。話したよ」


 母さんには、まず星羅が春風さんと話をしてから、もし必要であれば、母さんにも話すと伝えてある。

 俺たちがここに来た時点で、話があると察したのか、テレビを消してから俺たちが座るのを待つ。


「2人だけ?月ちゃんは?」


「まだいるけど、呼んだ方がいい?」


「だって、直接話を聞いたのは月ちゃんでしょ?巻き込んじゃって悪いけど、一応参加してもらいましょ。それに月ちゃんがいた方が、私も冷静に話ができると思うし」


 そういうが、きっと母さんは春風さんがいなくても冷静に話が出来ると思う。

 春風さんが参加しやすいように理由をつけたのだろう。


 俺は部屋で待っている春風さんを呼び、4人でリビングのソファに座る。

 L字型のソファなので、母さんと俺、星羅と春風さんに別れて座っている。


「さてと、じゃあ話して貰うわよ」


 母さんのその言葉で、話が始まった。

 星羅が自分で話し、母さんが俺と春風さんに嘘を言っていないか確認していく。

 そうやって話が進んでいき、あらかた星羅が話し終えてから、母さんが星羅に注意する。


「星羅。彼氏が出来たのはいい事だし、別れろとまでは言わない。でも時間は守って。あとどうしても帰りが遅くなるならちゃんと連絡しなさい。」


 それに関しては俺も同意見である。

 星羅はごめんなさいと謝る。


「でも1番の問題は、お金の件よね。」


 やっぱり母さんもそこが気になるらしい。

 当然と言えば当然だが。


「あなたの彼氏が、先輩から貰ってきたお金っていうのはほんとなの?」


「たぶん。本人もそう言ってるし」


「でもホントかどうかはわからないのよね?ホントはなにか危ないこととか、犯罪とかして盗んだりしたお金の可能性はない?」


「でも彼はそんな事する人じゃないよ」


「私はその彼と会ったことないからわからないけど、星羅はそんな人じゃないって信じてるのね?」


 母さんの言葉にうん。と短く、星羅は返す。


「でももし、先輩から貰ってるのがホントだとしたら、どうして先輩はあなたの彼氏に大金を渡すのかわからないわ」


 母さんはどういう事なの?と考え込む。

 だが、自分の中で納得出来る答えが見つからなかったのか、とりあえずと話し始める。


「今後、その彼にはお金は出させないで。もし遊びに行く時にお金が必要ならお母さんにいいなさい?そんなに多くは渡せないけど、その金額内で遊ぶようにすること。それと、今回帰りが遅くなったり、お金の事で、もしかしたら危ないことに巻き込まれる可能性もあるから、当分の間外出禁止。彼氏がなんで先輩からお金を貰えたのか、理由をはっきりさせて、そのお金を受け取らないって約束して、ちゃんと解決してから外出を許可します。」


「そんな!明日も遊ぶ約束してるのに・・・」


「何言ってるの!別れなさいって言わないだけマシでしょ」


 母さんなりの最大の譲歩だろう。

 ほんとは別れろと言いたいところを、娘の相手に対する気持ちをわかって、優しさを見せているのだ。

 お金の件が解決するまでは外出許可して貰えないのは仕方がない。当たり前だが、母さんも心配しているってことだ。


「でも、せめて明日は会いたい。会ってちゃんと話したいし、お金のことも直接聞く。もう受け取らないでって約束してくるから!」


 それでも星羅は食い下がる。

 さすがにこれは俺もフォロー出来ない。母さんと同じで星羅の事が心配だから、話が落ち着くまでは家にいてくれた方が安心出来る。

 そう思っていると、意外な人が星羅のフォローに入る。


「あの、ご家庭のことに口出しするのは差し出がましいかもしれませんが、私から提案があります・・・」


「どうしたの?」


「えっと、星羅ちゃんと彼氏さんのデートに、私と四宮くんがついて行くっていう事で、明日だけ外出を許可してあげてもらえませんか?」

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