第52話 春風さんの思惑
story teller ~葛原未来~
わたしはホテルの一室にいた。
そこで男から封筒を受け取り、中身を確認する。
「三浦さんいつもありがとう」
「優梨愛のためなら別にいいよ」
そういうと三浦はそれとは別に1万円札を5枚取り出し、渡してくる。
「これは?」
「そのお金は使い道があるんでしょ?これはそれ以外に使っていいよ」
もう、そういうのいいのにと言いながらラッキーと心の中で思う。
この男は投資で儲かったらしく、金遣いが荒い。わたしは投資とか詳しくないし、興味もないが、そのおかげで、適当に言い訳すればすぐにお金を用意してくれるので助かっている。
「わたし、シャワー浴びてくるね」
そういってバスルームに入る。
一刻も早く、この男の体液をながしたかった。
******
story teller ~四宮太陽~
「お金の件を早く解決させる為にも、私たちが着いていって、私たちも交えて彼氏さんとお話ができればいいと思ったんです。ほんとは陽子さんを交えた方がいいかもしれませんが、彼女の母親が出てくると相手も話しづらかったりするかなって思って」
春風さんは黙っている俺たちに対して、そう続けた。
「もちろん、私たちがいっても話しづらいかもしれませんが、今の話だと星羅ちゃん1人では行かせられませんし、仮に1人で行かせたとしても、ほんとに解決したのか、話し合ったのかわからないので、その監視?も含めてと言いますか。あっもちろん星羅ちゃんを疑ってるわけじゃないですよ?」
なるほど。そういう事か。
たぶん春風さんは、葛原の事を母さんに話せないからそれっぽい事を言っているだけで、本当の目的は星羅の彼氏に直接会ってその辺の話を詳しく聞きたいのだろう。
俺も会って話を聞きたいとは思っていたので、春風さんの援護に入る。
「確かに。星羅に任せて、外出も出来ないまま、電話やメッセージでやりとりさせるよりは直接会った方が早いかもしれない」
「四宮くんもそう思うよね?」
「うん。母さん、それで星羅の外出を許可できないかな?」
母さんは考え込んでいるようで、腕を組んで目を閉じている。
俺たちは黙って母さんの返事を待つ。
「星羅はどうする?2人が着いてきてもいいの?」
「うん、私もちゃんと会って話しがしたいっていうのはホントの事だし、明日会えるなら少し会えなくなるのは我慢出来るから」
「・・・わかったわ。その代わり、許可するのは明日だけ。あと2人は聞いた話をちゃんと私に伝えること。それならいいわ」
「ありがとうございます!」
母さんの返事に、難しい顔をしていた春風さんも笑顔になる。
星羅と2人でハイタッチなどしている。
2人が嬉しそうで良かった。
話し合いを終えた俺たちは、母さんが作っていた夕食を食べる。もちろん春風さんも一緒に。
夕食を食べ終わり、春風さんを送るために自宅から出る。
「さっきの提案って、直接話を聞いて、葛原が関わってるか調べようと思ったんだよね?」
「うん。葛原・・・さんが関わってても、関わってなくても、どっちにしろ会って話を聞いた方が早いと思うの」
やっぱりそういう事らしい。
母さんとしては、犯罪に関わってるかもしれないけど、その確信が持てないので、娘の交友関係に口出ししたくなかったのだろう。だから自分で直接会うのは気が引けて、いえなかったのだと思う。
「もし、彼氏さんが葛原・・・さんと関わってたら、四宮くんはどうする?」
「その時は、無理やりにでも星羅とは別れて貰うかもしれない。その彼氏が葛原と関わらないと約束したとしても、兄として心配だからね」
「そうなっても別れないで済む方法はないのかな」
「俺も心苦しいから色々考えてはみるけど、ちょっと難しいかも」
俺たちも星羅の立場なら別れたくはないだろう。
でも仕方がない。心を鬼にしなければ。葛原と関わるよりはその方がきっといいに決まっている。
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