第41話 課題

story teller ~春風月~


 空を色とりどりの光が包み。咲いては消え、咲いては消えを繰り返す。


 会場から少し離れているが、おかげで花火を全体的に見ることが出来る。

 もしかすると会場だったら、人の影に隠れてあまり見えなかったかもしれないので、結果的に良かったかもしれない。


 この5人で花火を見れてよかった。


 そんな気持ちで空を見上げていると、私の手が隣の男の子の手に触れる。

 あっ!と思い隣を見ると、四宮くんは気づいていないのか視線を花火に向けたままだ。


 意識しているのは私だけなのかな。

 少しくらい意識してくれてもいい気がするけどな。


 私だけが意識しているかもしれないと思うと少し残念な気持ちになる。

 それと同時に、先程の涼と秋川くんの事を思い出す。

 結果的に気持ちがバレてしまったからというのもあるが、それでも涼は頑張って自分の気持ちを伝えた。

 誤魔化すことも出来たかもしれないのに、行動に移した。

 それなら私も頑張りたい。四宮くんに好きになって欲しい。


 私は意を決して四宮くんの手を握り、指を絡める。

 いわゆる恋人繋ぎだ。


 まだ付き合ってもない、告白すらしていない状況で恋人繋ぎはやり過ぎかもしれないが、緊張しすぎてそこまで考えられなかった。


 手を繋いだだけなのに、思ったより恥ずかしい。


 そう思い、隣を見ると、四宮くんと目が合う。

 優しい笑顔を私に向けると、手を繋いだまま、また花火に目線を移動させる。

 その横顔がかっこよくて、そこからは花火よりも四宮くんの顔をチラチラと見ている時間の方が長かった。


 ******


story teller ~四宮太陽~


「太陽。夏休みの課題を手伝ってくれ」


 夏休みも終わりに近づき、家でダラダラと過ごしていたところに、堅治から電話でそう言われる。


「課題全然進んでないの?」


 あんな事があったし、課題に手をつけていないのは仕方ないかもしれないが、堅治は俺よりも成績がいいので、課題くらい1人で終わらせられるはずである。


「いや、オレも色々あって手をつけてなかったのだが、その」


「なんかあったの?」


「冬草さんが全然進んでないらしくてな。オレも自分の分があるから集中して手伝うのは難しくて、太陽にも手伝って欲しいんだが」


 なるほど、それで俺に連絡してきたわけか。

 課題は既に終わらせていたので、いいよと返事をする。

 昼過ぎには来るとの事なので、母さんにその事を伝え、部屋の片付けや準備をするのだった。


 ______


「よっす、太陽」


「四宮くん、こんにちは」


 母さんに案内され、部屋に入ってきた2人。

 俺はてっきり別々に来るものだと思っていたので、一緒に来たのには驚いた。


「一緒に来たんだ」


「さっき電話した時には既に一緒にいたからな」


「えっ、そうなの?」


 聞くと、昨日の時点で冬草さんから連絡があり、堅治が冬草さんの家に朝からお邪魔していたらしい。

 そして、思ったよりも課題が進んでおらず、堅治が手伝うも難航。

 そこで俺に電話をしてきたという事らしい。


「春風さんと夏木さんは?」


「一応連絡はしてみたのですが、2人とも出かけているらしく手伝えないと言っていました」


 夏木さんはホントかもしれないが、春風さんは完全にフェイクだ。

 なぜなら2人が俺の家に来る少し前に、課題が終わらないといって、メッセージが来ていた。

 きっと堅治と冬草さんを2人きりにしようと思ったのだろう。

 俺も断れば良かった。


「それで、どのくらい進んでないの?」


 俺がそういうと、冬草さんはカバンから課題のプリントや問題集などを出す。

 それぞれ見てみると、全教科ほぼ前半の途中くらいまでしか手がつけられていない。


「これは・・・」


「すみません、後からやろう、後からやろうと思っていたらもう夏休みも終わりかけてまして」


 恥ずかしそうに言う。

 これは今日だけでは終わらないな。明日は春風さんと夏木さんも呼んで、みんなで手伝った方が良さそうだ。

 そう思いながら、俺と堅治は手分けして冬草さんの課題を手伝った。主に俺が。


 3人で雑談しながら進めていくのも悪くはないなと思う。

 あと俺は気づいてるぞ。堅治が冬草さんの事をたま〜に涼って呼んでることに。

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