第200話 不審な住所
story teller ~雷門来海~
「沖縄・・・ねぇ」
花江さんから連絡を受けてすぐ、米田さんはスマホを眺めながら呟く。
「撮影とかで沖縄に行けたりしないかな?」
私に米田さんがそう聞いてくる。
たぶん米田さんはどうにか沖縄に行って、加藤さんの会社に直接向かいたいのだろう。それが手っ取り早いのも理解出来る。
もちろん仕事があれば沖縄に行くことも出来るが、そんなタイミングよく沖縄の仕事が入るとも思えない。
それに、沖縄に行けたとしてもきっと日中は仕事でスケジュールが埋まってしまうので難しいと思われる。
理想は完全プライベートで沖縄に行くことだが、それも現状では現実的じゃない。
私が思考を巡らせ、難しいと思いますと伝えると、そうだよなと米田さん。
「こっちで地道に情報を集めるしかないか」
米田さんは、せっかく手に入った情報を上手く活かせ無いことに肩を落としてはぁとため息を吐いている。
「でも、なんで沖縄なんでしょうか。加藤さんは葛原さんと一緒にいるはずですよね?」
私がふと思った疑問を口にするが、私同様に答えを持っているはずもない米田さんは頭を悩ませている。
「寄宮さんから送られてきた会社のホームページが古いって可能性もあるよね?」
そういうものなのだろうか?
私はホームページなどには詳しくないから分からないが、その可能性も拭いきれないかもしれない。
「この会社を調べてみても情報が全然出てこないな。資本金額を見る限り、あんまり規模の大きな会社じゃないかも・・・」
私はネットを見ながら独り言を言って真剣な表情を浮かべる米田さんの横顔を眺める。
「あれ?」
すると、米田さんがスマホをスクロールする指を止める。
「どうしたんですか?」
「この会社住所がおかしいんだよ」
そう言うと米田さんは、スマホの画面が見えるように椅子を動かして距離を詰めてくる。
「ホームページの住所を調べるとオフィスビルが出てくるんだ。そして加藤の会社のホームページにはビルの住所までしか記載がなくて、何階かわからないんだよ」
「このビル全部加藤さんの会社って可能性はないですか?」
「このビルはたくさんのテナントが入ってて、入ってるテナントを調べてみたけど、代表が違ったり、運営会社が違うんだよね」
グループ会社って可能性もあるけどねと米田さんは続けてくる。
もしそうだった場合、加藤以外にも警戒しないといけない人が増えてしまうかもしれない。
出来ればそれは避けたい。
******
story teller ~寄宮父の部下~
花江さんにお願いされていた、加藤誠という人物の情報を見つけたのは本当に偶然だった。
加藤誠なんて名前をネットで検索すればとてつもないヒット数になるし、それくらいは花江さん自身試しているだろう。
きっと俺の人脈を使って探して欲しいと言うことだろうが、花江さんの父親である直輝さんでさえ知らない人を俺が探すのは無理難題だと思って半分は諦めていたのだが、妻がその人を知ってると言ってきたのだった。
花江さんに連絡をした後、加藤の会社のホームページに目を通しながら、なぜ知っていたのか、理由を妻に聞いてみることにした。
「だいぶ前だけど、うちの店長に話があるって言ってお店に来てた人で、加藤誠さんって社長さんがいたんだよね。店長と話をする為にわざわざ社長が来るってなんかおかしいなと思って印象に残ってたんだよね」
妻の勤め先は普通の家電量販店である。
そこの運営会社の社長とではなく、ただの店舗責任者である店長と話すために会社の代表である加藤がわざわざ沖縄から来た?
確かにそれは印象に残っていてもおかしくはない。
俺の勘だが、この沖縄の加藤誠は花江さんが探している加藤誠なのだろうと思う。
「なんでわざわざ沖縄から来たとか聞いてないの?」
ただの興味本位で妻に聞いてみると、詳しくはわからないけどと続ける。
「なんかよくわかんないけど、自分の会社の紹介で客をお店に連れてくるから、客がきたら適当に家電を購入させて、その買った物は客に渡さずに、指定した住所に発送して欲しいみたいな話をされたみたい。商談と言うよりも依頼?みたいな感じかな?さすがに断ったみたいだけど」
なんだそのいかにも怪しい話は。断って当然だ。
個人的に客を紹介するとか、客を呼び込むための広告を打つとかではなく、会社として紹介するのに、商品は客に渡さない?その商品はどこにいくんだ。
そして、そんな事をして加藤の会社にはどんなメリットがあるんだ?
どう考えても理解出来ないが、それが逆に俺の好奇心を擽る。
花江さんからのお願いを抜きにしても、加藤の会社が何をしている会社なのか気になってきた。
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