第139話 男子のお泊まりパート

story teller ~四宮太陽~


「で?春風さんとはどこまでいったんだ?」


 月たちが俺の家に泊まるということで、星羅に半強制的に追い出されているため、善夜の家に泊めてもらっていた。

 どうせなら俺たちもみんなで泊まろうという事になり、俺の方に堅治と架流さん、それに優希くんもいる。正直架流さんは来ると思わなかった。


 そして堅治の言うどこまでとは、月とどこまでしたのかという事だろう。男だけが集まるとそういう話になるのは仕方ないが、1番興味津々そうに前のめりに聞く体勢になっているのは優希くんだ。中学生だし仕方ない。

 けど俺は特に答える気もなかったので、お断りだと手だけ振って、それを返事代わりとする。


「なんだよ。せっかく男しかいないのにさ」


「僕は花江ちゃんと最後までしたよ?」


「また殴られたいんですか?」


 俺が答えないことにつまらなさそうな顔をする堅治に対し、架流さんがいらん事を言って更につまらなさそうな顔にさせる。この人、人をおちょくる時は楽しそうに笑うな。

 そんな架流さんに、さすがです!そして詳しく教えて下さい!と優希くんが、憧れなのか興味なのかよくわからない感じに聞いている。

 架流さんもちゃんと答えようとしているので、話題を変えて止めることにしよう。


「ところで、善夜も夏木さんと付き合ってるわけでしょ?2人の時ってどんな感じなの?」


 正直、善夜と夏木さんが2人の時に何をしているのか想像出来ない。


「みんなといる時とほとんど変わらないよ?」


「確かに、光ちゃんが善夜くんに甘えてるのとか想像出来ないかも」


 架流さんは1度天井を見て考えたあと、想像出来なかったようだ。だが、善夜はあーと小さく言った後、でもと続ける。


「結構甘えてきますよ?普段があんな感じだから想像出来ないかもしれないですけど」


「えっどんな風に甘えるの?」


 俺が興味本位でそう聞くと、善夜は素直に答えてくれる。


「手を繋がなかったりすると少し不機嫌そうになったり、家で一緒にいる時はくっついてくるよ。ギャップ?が可愛いんだよね」


 あの夏木さんが甘える?想像できない。

 みんなもそう思ったようで、うーんと考え込むが首を横に振って諦めている。

 そこからは優希くんが気になっていたことを善夜に問いかける。


「善夜さんって髪切らないんですか?」


 俺と堅治はほぼ毎日善夜に会うので、全然気にならなくなっていたが、星羅も初めて会った時に聞いていたが、このカップルは似た者同士なのかな。


「顔見られるの恥ずかしくて」


 善夜のその言葉を聞いて、堅治がニヤニヤしているかと思うと、善夜を押さえる。


「今です!」


 堅治の言葉に、よっしゃ!と架流さんが善夜の前髪を持ち上げる。この2人息ぴったりじゃないか?


 そして、前髪を持ち上げられた善夜は必死に暴れるが、その場にいる全員が、善夜の顔を見て固まる。


 そこにはイケメンがいた。


 すぐに堅治の腕から抜け出し、前髪が顔を隠してしまう。


「善夜、お前めちゃくちゃイケメンだな」


 同じくイケメンである堅治がそう言うと、恥ずかしそうにそんな事ないよと否定している。


「いや、善夜くん。髪切った方がいいよ」


「俺もそう思います」


 俺も黙って頷く。なんで顔を隠しているのかわからないレベルだ。

 ここで名前を出すのは憚れるので口には出さないが、九十九といい勝負。というか正直九十九よりもイケメンだと思う。


「髪切ったら夏木さんも喜ぶと思うけど」


「夏木さんには絶対見せられないよ。ボクの顔なんて見せたら幻滅されちゃう。ブスだし」


 俺の言葉に善夜はそう返すが、嫌味にしか聞こえない。善夜がブスだとしたら、俺はなんなんだ。


「俺、自分に自信なくなってきました」


「僕も自分のことカッコイイと思ってたけどダメだ。負けた」


「なんかムカつくから寝よう」


「そうしようか。おやすみ善夜」


 善夜以外が自信を無くし、敷かれている布団に横になり、目を閉じる。


「えっなんで?ボクなにかした!?」


 善夜だけは1人騒いでいるが、今日はもう寝よう。寝て忘れよう。そうじゃないと俺は自分の顔が嫌いになりそうだ。

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