第34話 原因かもしれません
story teller ~春風月~
さっきのはドキドキした。
四宮くんに抱きしめられて、顔が至近距離にあって。
四宮くんはすぐに離してくれなくて、でもそれが嬉しくて。
あのまま陽子さんがこなかったら私たちはどうなっていただろうか。
そのままキ・・・スとかしたのだろうか。
思い出して顔がどんどんと熱くなる。
四宮くんが着替え終わるまでに落ち着かせなきゃ。
少し深呼吸をして息を整え、別のことを考えようとするも、四宮くんの顔しか出てこない。
夏休み、もっと自分からアタックしないと。
今よりも関係を進めないと。
まずは夏休みに自分から遊びに誘うと心に決める。
******
story teller ~四宮太陽~
「今なんて?」
「花江に振られたって言ったんだよ」
「いつの話ですか?」
力なく答える堅治に、冬草さんが更に質問する。
「みんなで海に行った次の日だよ。その日も会う約束をしてて、2人で遊んだ帰り道でそう言われた。」
「理由とは聞いてないの?」
「聞いたさ。でもただ、あなたにわたくしは相応しくないとしか言われなかった。あなたにはもっと相応しい人がいるから。そう言われたよ。メッセージもブロックされて、電話も着信拒否。家に行っても出てこない。」
堅治はここまで話すと床に視線を落とし、黙ってしまう。
「海でもあんなに仲良さそうにしてたのに、急にどうしたんだ」
俺はあの日、なにか変わったことは無かったかと思い返す。しかし花江さんも楽しんでいたようにしか思えない。
「・・・あの、四宮くん。少し話があるのですがいいですか?」
「話?」
「はい。もしかしたら今回の件に関わるかもしれない話です」
冬草さんが今回の件になにか関係してる?
「わかった。聞かせて欲しい」
「ありがとうございます。外で話しましょう。月と光は堅治くんをお願いします」
そういうと冬草さんが部屋を出るので俺もそれについて行く。
______
俺は冬草さんと外に出ると、向き合って、冬草さんが話し始めるのを待つ。
なにから話そうかというように、少し迷いながらもしっかりとした口調で冬草さんは話し始める。
「私は、堅治くんの事が好きです。最初に四宮くんに紹介された日から。今もずっと。」
俺が黙って聞いているのを確認してから、そのまま話を続ける。
「そして、海に行った日。私と寄宮さんが2人で飲み物を買いに行った時に、堅治くんの事が好きだと寄宮さんにも伝えました。だからもしかしたら、私の気持ちを知って、寄宮さんは自分が身を引こうとしたのかもしれません」
「そんな事があったんだ」
「はい。四宮くんは堅治くんの友だちですから、話してしまうと私たちの今の関係が壊れてしまうのではないかと思って黙っていました。ごめんなさい」
深く頭を下げる冬草さんに、頭を上げてと伝える。
「確かにそれは関係しているかもしれないけど、花江さんの今回の行動は堅治の気持ちは無視してることになる。花江さんと堅治がしっかり話し合っていない事は今の堅治を見てもわかるし、別になにかあるのかもしれない」
もしかしたら本当に花江さんが身を引いて、冬草さんにチャンスを譲ろうとしているだけかもしれない。
でも今までも堅治の事を好きな女の子はそれなりにいたので、今回だけ身を引く選択を選ぶとは考えにくい。
「別に理由があったとしても、私の話が原因かもしれません。だとしたら私はちゃんと寄宮さんと話し合いたいです。」
「堅治と花江さんの問題だからどこまで踏み込んでいいのかわからないけど、話し合いの場を作るくらいはしてあげたい。」
だがしかし、花江さんに連絡が取れない以上どうしようもない。同じ中学校だったとはいえ、さすがに家を知っている訳でもない。
「とりあえず、花江さんと連絡が取れないことにはなにも分からないし、どうすることもでないから、俺から連絡してみるよ。もしかしたら俺にはなにか話してくれるかもしれないし。」
「わかりました。今の状況で私から連絡すると逆効果になるかもしれませんし。」
俺たちは今日は一旦帰り、明日俺の家に集まる事にした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます