第97話 お泊まり
story teller ~四宮太陽~
コンビニから帰ってきた俺たちは、荷物を持って月の部屋に入る。
袋から買った物を出していき、ローテーブルに並べていくが、袋の奥にある、それはそのままにしておこうと思い、袋ごと俺のカバンの近くに置く。
月は並んだお菓子や飲み物を見て目を輝かせている。
「こんなに食べたら太っちゃいそう」
「月は痩せてるから大丈夫だよ」
「えへへ、ありがとう!じゃあ今日は2人でパーティだね」
俺たちはお菓子を片っ端から開け、口に運んでいく。
時刻は午後11時。この時間に人の家でお菓子を食べまくるのは少しいけない事をしている気分になる。
「太陽くん、もたれてもいい?」
「うん?いいよ?」
いつもならなにも言わずにもたれてくるのにと思いながら返事をすると、月は体を俺に預けてくる。
俺は月を支えながら、手に持ったお菓子を月の口元に持っていく。月はそれをそのままパクリと食べる。
「次はあれがいいな〜」
「これ?はいどうぞ」
「ありがとう。なんだかお嬢様みたい」
「次はどれをお取りしましょうか?」
「えへへ、じゃあね、あれがいいな」
2人でふざけながらお菓子を食べ進める。
ただお菓子を食べて、ジュースを飲み、クリスマスらしからぬ事をしているが、この子と一緒に過ごせるなら、なんでもいいのかもしれない。それくらいこの時間が楽しい。
「太陽くんゲームする?」
「ゲーム?」
「うん、昨日みんなでやったやつ!2人でも出来るよね?」
月は俺から離れ、クローゼットを開けてからゲーム機を取り出すとテレビにコードを繋いで、起動する。
「はい、太陽くんのコントローラー」
俺は差し出されたコントローラーを受け取り、テレビの前に移動する。
月と並んで座り、2人でゲームを進めていく。
昨日みんなでやった時もものすごく盛り上がったが、2人でも盛り上がる。
お互いに邪魔し合ったり、時には協力したり。
ゲームに集中しすぎて、そろそろ休憩しようとなった時には、午前1時を回っていた。
______
「それじゃお風呂入ってくるね。あんまり色んなところ開けないでね?」
そう言うと月は、お風呂に入るために部屋を出ていく。
俺が一旦帰ったタイミングで入ったと思っていたが、その時は入っていなかったらしい。
1人残された俺は、なにをしようかと考えていたが、ふとカバンの横に置いた袋の存在を思い出す。
袋の中には、コンビニで買ったあれが入っている。
もしその時がきたらスマートに行動できるように、ベッドの近くに置いた方がいいのか、準備万端だと引かれてしまうかもと悩んでしまう。
そもそもするかどうかわからないが、コンビニでの月の反応を見る限り、そうなってもいいと思っているのかもしれない。
1人で色々と考えてしまい、緊張してくる。
俺はこれ以上意識しないように、お菓子に手を伸ばし、1人で食べる。
30分ほどすると月は戻ってきた。
まだ髪も少し濡れていて、お風呂からあがったばかりだからか、頬も少し赤い。いつもよりも色っぽく見える。
「お、おかえり」
「ただいま・・・」
そんな月の姿と、先程考えてた内容を意識してしまい、どもってしまった。
月はタオルで髪を絞りながら、俺の隣にちょこんと座る。距離が近いため、シャンプーなのか、ボディソープなのか、いい匂いが鼻孔をくすぐる。
「髪乾かさないと風邪ひくよ?」
俺がそういうと、棚の上からドライヤーを取り、乾かしてくれる?と渡してくる。
初めての事で緊張しながら、月の柔らかい髪を持ち、ドライヤーの温風で乾かしていく。
「お嬢様、いかがですか?」
「えへへ、人に乾かして貰うと楽だね」
俺がふざけて声をかけると、月は楽しそうに笑う。
それにしても、月の髪はすごくフワフワしてる。触ってて気持ちいい。
髪を乾かし終えると、月は俺に背中を向けてもたれかかってくる。
「太陽くん」
「なに?」
「今日はありがとう。すごく楽しい」
「俺も楽しいよ。一緒に過ごしてくれてありがとう」
「さっき撮った写真、待ち受けにしてもいい?」
「いいよ、俺も待ち受けにする」
さっき撮った写真とは、イルミネーション会場の入口にある木の前で撮った写真のことだ。
帰る前に、従業員の方にお願いして撮影してもらった。
逆光で俺たちの顔は少し見えにくいが、それでも2人が笑っているのはわかり、楽しい雰囲気がしっかりと伝わる。
2人でスマホを操作して、それぞれ待ち受けに設定して見せ合う。
「お揃いだ」
「初めてのお揃いだね」
2人で顔を見合わせて笑う。
この時間がずっと続けばいいのに。
それから少し雑談をして、そろそろ寝ようという事になる。
今更だけど、俺はどこで眠ったらいいのだろうか。
俺が迷っていると、月がベッドに乗り、自分の隣を叩いている。
「こっちにきて?その・・・一緒に寝よ?」
恥ずかしそうに言う月が可愛くて、今隣にいったらやばいかもしれない。でも呼ばれて行かない訳にもいかないので、なるべく変なことは考えないようにしなからベッドに上がる。
部屋の電気を消してから、2人で並んで横になると、月がくっついてくる。暗闇なのにすぐ横に月の顔があるのを感じる。
「太陽くんにくっつくとなんだか安心する」
月は俺の腕枕を堪能するように、顔を擦り付けてくる。
俺は横を向き、正面から月を抱きしめる。
無性にそうしたくなったのだ。
「太陽くんと一緒に寝てるなんて夢見たい」
「俺も、月と一緒に眠れると思わなかった」
くっついてると、先程の邪な気持ちはなくなり、月の言う通り、なんだか安心して心が落ち着いてくる。
少し眠くなってきたと思ったが、月が少し動いて俺の顔をまっすぐに見つめてくる。
「太陽くん。キス・・・していい?」
面と向かってそう言われ、ドキドキしてしまう。
暗闇に慣れてきて、目の前の月の顔がハッキリと目に映り、俺の返事を待っている月は、なんだか不安そうに見える。
「いいよ」
俺がそういうと、月はゆっくり顔を近づけてきて、キスをする。
抱きしめ合い、さっきした時よりも長く唇を重ねる。
顔を離し、キスが終わっても俺たちは見つめあったまま。
「なんか不安そうに見えるけど、大丈夫?」
俺がそう聞くと、目を逸らして恥ずかしそうにしている。
モジモジと体を動かして、なにかを言おうとする月の言葉を待つ。
「えっとね、さっき初めてキスしてから、ずっと太陽くんとキスしたいって思ってたの。でも、エッチな女の子だと思われちゃうかなって思って・・・」
「待って、可愛い。それで不安そうにしてたんだ」
「なんかバカにしてない?」
「バカにしてないよ。俺もキスしたいって思ってたし、エッチな女の子だなんて思わないから安心して」
頬を膨らませて、少し不機嫌そうな月にそう言って、俺はまたキスをする。
月も抵抗せずに受け入れてくれる。
唇を離しては、またキスをしてを何度も繰り返し、お互いに、相手の体を触り合う。
背中を触り、そのまま脇腹に移動し、触れるか触れないかくらいの力で、優しく撫でるように触る。
俺の手が月のお腹から上を触ろうとした時、月はビクッと体を震わせる。
「ごめん、嫌だった?」
「ううん、くすぐったかっただけ」
「そっか、よかった」
「・・・続けていいよ?」
俺たちはそのまま、体を重ね、夜が明ける頃に眠りについた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます