第4話 放課後の楽しみ

story teller ~秋川堅治~


 昼休みも終わり、5時限目。

 オレは太陽との会話を思い出しながら窓の外を眺める。

 太陽とは幼稚園からの幼なじみであり、親友だ。

 幼稚園を卒園してからも、小中高と同じ学校に通い、遊び、時には悩みも聞いたり、聞いてもらったり、支え合いながら過ごしてきた。


 だからこそ、心配だった。

 太陽の大丈夫という言葉は、太陽が過去を乗り越えた訳ではなく、オレの考えすぎだと言うことだろう。


「確かに、惚れてると決めつける訳にもいかんしな。」


 誰に聞かせるわけでもなくぽつりと呟く。


「春風月、、、か」


 学年で1番可愛いと話題の女の子が、なにを考えているのか、オレはそれが知りたかった。

 太陽の為にも。


 オレの考えすぎだといいんだが。

 少し探ってみるか。


 そう思い、早速明日から行動することに決めた。


 ******


story teller ~四宮太陽~


 6時限目が終わり、SHR前の掃除の時間がくる。

 うちの高校では出席番号順に男女3人ずつでグループが決まり、月に1度決められた掃除担当場所を入れ替える方式を取っている。

 今月の俺たちグループの担当場所は特別教室棟3階のトイレである。

 特別教室棟の3階は音楽室と書道室があるものの、それ以外は空き教室が倉庫のようになっている為、基本的に選択授業の音楽や書道がない限りは、吹奏楽部などの部活生以外立ち寄らない。

 その為、この場所のトイレは比較的綺麗である。


 トイレの床に水を流し、便器や床を軽く擦る程度で掃除が終わってしまうので、後はグループの男子メンバーと時間までだべって終わる。


 いつものように軽く掃除をし、時間になるまで同じグループの佐藤と佐々木とだべっていると、ポケットのスマホが震える。


 堅治あたりがメッセージでも送ってきたのかと思い、見回りの先生にバレないようトイレの個室の影に隠れてスマホを確認する。


「えっ!?」


 スマホを確認して、びっくりした。

 なんと春風さんからのメッセージだった。

 しかもその内容が


('MOON' 今日、よかったら一緒に帰らない?)


 俺がメッセージの内容に驚いていると、俺の声にびっくりした佐藤と佐々木が声をかけてくる。


「四宮?どうした?」


「大丈夫〜?」


「うん、大丈夫、大丈夫、ははっ」


 春風さんからこんなメッセージが来たなんて佐藤と佐々木に見られたら、なにを言われるかわからない。

 少し誤魔化すように答え俺はメッセージアプリを立ち上げる。


('SUN' えっと、夏木さんとかじゃなくて俺?)


 春風さんは放課後は普段、夏木さんや冬草さんと遊びに行ったり、一緒に帰ったりしているはずだと思い、なにかの間違いではないかと、確認も兼ねて返信する。


('MOON' うん、光は朝の遅刻で日誌を書かないといけないらしくて、涼は用事があるんだって。だから四宮くん一緒に帰れないかなー?と思って。)


 なるほど、確かに夏木さんは遅刻していたし、冬草さんは別で用事があるから1人で帰るってことか。

 それで誰か一緒に帰れる人を探してて、昨日メッセージやりとりした俺がトークで上の方にいたから誘ってくれたのかな。


 俺はそう解釈し、いいよと返信する。

 するとすぐに返信が返ってきた。


('MOON' ありがとう!じゃあSHRが終わったら、少し教室に残ってて。みんなが居なくなってから帰ろ!一緒に帰ってるの見られたらまたみんなに質問攻めされちゃうし。)


('SUN' わかった。)


 短くそう返信し、スマホを閉じてポケットにしまう。

 放課後の小さな楽しみが出来た事で心が弾む。

 それと同時に昼休みに堅治の言葉を思い出す。

 大丈夫、なのか、、、?

 そう言った幼なじみの顔は心配そうにしていた。


 きっと大丈夫だよな?

 なんたって学年で1番可愛い春風さんが俺に惚れる事はありえない。


 そう考え、佐藤と佐々木にそろそろ時間だから戻ろうと伝える。

 今はただ、偶然でも春風さんと帰れる時間を楽しみにしておこう。

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