第114話 嫉妬?

story teller ~四宮太陽~


 進級して新たなクラスになったため、みんなとは席が離れてしまった。

 周りの席の人と仲良くなれるかと思ったが、俺が月と付き合っているので、男子からは目の敵にされ、女子と話すと月に申し訳ない気持ちになるため、孤立してしまった。

 それでも、月たちと同じクラスなだけマシだ。1人だけクラスが違ったら地獄でしかない。


「席離れてちゃって寂しいね」


 月は休み時間になると、決まって俺の席に来てくれる。

 授業中、近くの男子が月に話しかけているのをよく見かけるので、少し嫉妬してしまうが、月から必要以上に話しかける事はないので、あまり気にしないようにする。


「はー、四宮はともかく、月と離れたのはやだな」


「ボクは?」


「善夜は近いと困る」


「なんで!?」


 俺と月が話していると、夏木さんと善夜も近くにやってくる。結局俺たちは、このメンバーで集まるのが1番落ち着くのだ。

 善夜と夏木さんもあれから順調に仲を深めているらしく、前まではお互いに恋人もいなくて暇だからという理由で遊んでたのが、遊びたいからという理由に変わっているらしい。

 九十九の時は心配したが、結果的には前進したと思っておく。


「今日は出勤の日?」


「いや、今日は休みだよ」


「じゃあ、太陽くんの家に行ってもいい?」


 もちろんいいよと返す。

 月の狙いは、この前一緒にやっていたRPGの最新作だろう。先日発売されたばかりで、俺もまだクリア出来ていないが、俺のプレイを後ろから見ているだけでも楽しいとの事でバイトのない日に2人でちょこちょこと進めている。


「ボクもゲーム買おうかな。家にいる時暇なんだよね」


「一応レイドバトルならオンラインも対応してるから、買ったら一緒にできるよ」


「じゃあ買おうかなー。お年玉もほとんど使ってないし」


 善夜とそんな話をしていると、ワタシだけ話がわからないんだけどと夏木さんが言ってくる。

 4人でいるのに、3人しか伝わらない話を広げてしまったのは申し訳ない。


「光も買う?もし買うなら私も自分で買って、みんなでやろうよ!」


「んー、ワタシは買ってもやらなくなりそうだからなー」


 月が夏木さんを誘うがあまり乗り気ではない様子。夏木さんはどちらかと言うとアウトドア派らしいので仕方がない。

 それでも月は諦めずに誘っているので、同じ楽しみを共有したいのだろう。夏木さんは強く断ることができずに困ってそうなのでそろそろ止めることにする。


 学校が終わり、俺と月は部屋でゲームを進める。

 ゲームとは関係ない話をしながら、遊んでいると、月は俺に体を持たれさせてくる。こういう時は甘えたいのだと知っているので、コントローラーを置いてから、月に話しかける。


「どうしたの?」


「・・・なんでもないよ」


 月はそう言うが、表情を見てなんとなく察する。ここで月に言わせてしまうのは、男として気が引けるので、俺から提案する。


「最近してないから、月が嫌じゃなければしたいんだけど・・・」


 恥ずかしいが、勇気を出して聞いてみると、月は嬉しそうな顔をしてキスしてくる。それを合図に俺たちはベッドに移動した。

 俺の彼女はほんとに可愛い。


 ______


 進級してから1週間ほど過ぎ、今日は入学式がある。

 うちの学校は、2、3年生が進級して、1週間後に新入生がやってくる。

 必要書類などを取りに来る子もいるので、たまに校内で見かけることもあるが、ちゃんと学校に通うという意味では今日が初になる。


「朝からずっと視線を感じる気がするよ」


「まぁ新入生もいるしね。月を初めて見た新入生は目を奪われるよ」


 月と一緒に登校しながら、ずっと視線を感じていたのは俺も同じだ。なんだか嫉妬心が芽生えてきて、俺は月の手を握る。少しでも彼氏アピールしないと。


「どうしたの?」


「いや、月を他の人に取られたくないなと思って」


「私は太陽くんしか見てないから安心して?」


 月は笑顔を向けてくれる。それが嬉しくて抱きしめたくなるが、通学路でそこまでの勇気はない。

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