第267話 自宅への連絡と確定した嫌な未来
story teller ~桜木先生~
原田の自宅に電話をかけたところ、春風たちから聞いた通り原田は親に内緒で学校を休んでいた。
電話を取った原田の母親は、すぐ本人に連絡し、明日は学校にちゃんと行くように伝えておくと言っていた。
これで原田は一先ず大丈夫だろう。
それよりも、今心配なのは前田先生の方だ。
電話を終えた彼女は、これでよかったんですよね?と、自身の不安を隠すことなく聞いてくる。
「大丈夫です。原田くんは学級委員と文化祭実行委員の両方を引き受けるくらい真面目な生徒じゃないですか。きっと話せばちゃんとわかってくれますよ」
そう言って目の前の女性教師を安心させようとするが、それだけでは心が安らがないのか、彼女の瞳には明るさがない。
「明日、原田くんと話をする時には俺も同席します。前田先生が話せないのなら、俺が代わりに話してもいいですので」
「・・・・・・すみません。よろしくお願いします」
その返答から、俺が話した方が良さそうだと感じ取る。原田をどう説得するか、今から考えておかなければ。
******
story teller ~原田幸祐~
スマホが震え、その振動でテーブルが音を鳴らす。
「出なくていいの?」
バイブレーションの長さから、メッセージではなく、電話だと理解した未来さんが、僕の下腹部を撫でながら聞いてくる。
どうせ斉藤さんあたりだろうから出る必要はないと考え、いいんですよと答える。
「そう。君がいいならいいのだけれど」
イタズラっぽい、可愛らしい笑みを浮かべる未来さんを見て心が滾る。
少しするとスマホの動きは止まり、静かな空間で空気の音だけが聞こえ始める。
「ダーメ。今日はくっつくだけって約束でしょ」
体に押し付けられた彼女の胸を、背中に回した手を伸ばして触ろうとし弾かれる。
女の子には定期的にその日が来ると分かっていたとして、それが今日だと理解していても、自分の欲を優先してしまうのは、僕がついこの間まで、そういう行為をした事がなかったからだろうか。
「・・・あらら。まったく、仕方ないわね」
未来さんはダメといいつつも、僕の大きくなったものに気づき、ベルトをカチャカチャと緩くして手を入れてくる。
「これで我慢して?」
それと同時に耳元で囁かれ、既に興奮していた僕の心は、更に欲望に落ちていく。
しかし、再度スマホが着信を知らせて来たので、落ちた谷から一気に地上まで無理やりに引き上げられる。
「ふふっ。出た方がいいんじゃない?」
そう言うと、未来さんはスっとズボンから手を取りだし、自身の指についた透明な光るものを舐めとる。
「そうします」
邪魔された事への怒りを電話の相手にぶつけてやろうかと思っていたが、画面に表示された母という文字で、一気に興奮が冷め、ひんやりとした部屋にいるにも関わらず、背中に冷たい汗が流れる。
「どうしたの?」
ベッドの中から小首をかしげ、僕の反応を見守る未来さんに、どうしよう。と呟きながらスマホの画面を見せる。
「ああ。もしかしてバレちゃった?」
「かもしれません」
「切っちゃったら?」
これは、電話を取っても取らなくても怒られる。そんな確定している未来が見えていながら、今、この幸せな時間を優先することを選び、言われた通りに通話拒否ボタンをタップする。
「電源、切っておきます」
「うん。そうしましょ」
このまま家に帰りたくない。でも、そんな事をすれば、うちの母親は警察に捜索願を出してしまう。
ベッドに戻り、想い人の体温を感じて気持ちを切り替えようと思ったが、そんな簡単に切り替わることも無く、結局最後まで興奮することは出来なかった。
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