第19話 名探偵
story teller ~春風月~
いい作戦だと思ったんだけどなぁ。
彼女さんがいるなら無理には実行出来ない。
うーん、他になにかいい作戦は無いだろうか。
私は手に持ったシャーペンのキャップをカチカチと押しながら考える。
しかし、所詮は一高校生。直接聞く以外にやりようがない気がする。
1本目の芯を全て出し切り、2本目の芯が出てきたが、それでもキャップを推し続ける。
考えれば考えるほど、何も思い浮かばない。
調査隊とかいって調子に乗ったわりには、なにも行動出来ない。
秋川くんは彼女さんがいるから2人では誘えない。
やっぱり光に直接聞くしかないかな。でもそれだと素直に答えてくれなさそうだし。
そこで私は閃いてしまった。
2人きりで遊びに行くのはさすがにこっちも誘いにくいが、みんなで遊びにいくのは、今までもあったし問題ないんだよね?
ってことは。
さすが私!と思いながら、四宮くんと涼に早く作戦を伝えたくてうずうずしていた。
******
story teller ~四宮太陽~
昼休み。俺たち調査隊の3人は、人気のない特別教室棟3階の非常階段に来ていた。
階段に座り込み、膝にお弁当を広げながら話す。
1番上の段に俺が座り、その数段下に、春風さんと冬草さんが横並びで座っている。
「堅治は別のクラスだからともかく、よく夏木さんに疑われずに来れたね?」
「光に嘘つくのは心が痛むけど、昼食に誘ってもし来たら、いつも通り中庭に行って、作戦はメッセージで伝えようと思ってたんだけどさ」
「秋川くんも来るって伝えたら、私は別のクラスの友だちと食べるから〜って言われました」
「なるほど」
堅治が来る事を伝えた途端、別で食べるのはやっぱり堅治を避けているとしか思えない。
「なんかごめんね。光が」
「えっ、なんで春風さんが謝るの?」
「だって、四宮くんと秋川くんは仲のいい友だちだし、友だちが他の人に避けられるのって嫌だよなって思って」
「気にしないでよ。まだなにがあったか分からないけど、もしかしたら堅治がなにかしたのかもしれないし」
でも幼稚園からずっと一緒だった堅治が、女の子に避けられるような事をするとは思えない。
もちろん、堅治が女の子全員から好かれてるとは言わないが、夏木さんと知り合った最初の頃は普通に話していたりもしていた。
夏木さんに関しても、知り合ってまで1ヶ月くらいだが、誰かに酷いことをするような人には見えない。
「それで作戦を思いついたと言ってましたが、どんな作戦なのですか?」
俺が考え込んでいると、冬草さんが春風さんに問いかける。
「えっとね、秋川くんを私たちが2人きりで遊びに誘うのは問題あるわけだよね?」
「彼女いるしね」
「そうですね。」
少し下に座る冬草さんが顔を俯けている。
なんか元気がなくなったような?
「それでね!じゃあみんなで遊びに行った時に、私か涼が秋川くんと2人きりになるようにセッティングして、その時にそれとなく聞けばいいんじゃないかな?」
「なるほど、それなら確かに2人きりで遊びに誘っている訳ではないので、問題解決ですね!」
「確かに。それなら大丈夫かも」
あとは堅治が素直に答えてくれるかどうか。
「でも実際、どうやって2人きりになるようにセッティングする?」
「モールとかだとさ、周りに人もいるし、難しいと思うんだけど、カラオケならどうかな?部屋もドアが着いてるから、2人きりだし、声も漏れない!」
そこもちゃんと考えて来ました!名探偵月!と両手を腰に当てて胸を張ってドヤ顔をしている。
可愛い。
「じゃああとは誰が堅治に聞くかって事だけど」
「私はそのぉ、ちょっと遠慮したいというか」
「?春風さん堅治の事苦手?」
「ち、違うよ!そうじゃないけど」
そう言いながらも少し焦っているように見える。夏木さんだけじゃなくて、春風さんまで堅治の事が苦手とかだったら最初に堅治を紹介した俺がちょっと気まずいけど。
「ま、まぁそこは私が聞くって決めてたので大丈夫ですよ!ね、月?」
「う、うん。そう!そういう話になってたから」
いつの間にそんな話になっていたんだろうか。春風さんと冬草さんはお互いに顔を合わせながら、うんうんと頷いている。俺がメッセージを見逃したのか?
「じゃあ作戦も決まったし、ご飯食べて教室に戻ろ!」
そう言って春風さんは急いでご飯を食べていた。
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