第105話 おそろい?

story teller ~春風月~


 1月31日の太陽くんの誕生日前日になっても、プレゼントが決まらず焦っていた。

 友だちに送るものならここまで考え込まず、すぐ決められたかもしれないが、恋人への贈り物、それも付き合って初めての誕生日なので、色々と悩んでしまう。


「月まだいい物見つからない?」


「うん、なんかこれだ!って物がなくて」


「恋人へのプレゼントって悩みますよね」


 光と涼はすでにプレゼントを決めているようだが、こうして一緒に探してくれる。

 光はゲーム関連の物はどうかとアドバイスをくれたが、太陽くんは趣味関連の物だと大抵自分で買ってしまう。

 そろそろこのショッピングモールのお店もめぼしい場所は見終わってしまうが、最後に立ち寄ったお店で心惹かれるものを見つけた。


「2人とも!これは?」


 私は見つけたものを手に取り、2人に見せる。


「いいんじゃない?四宮も喜ぶと思うよ」


「ある意味おそろいですね」


 2人もこれならいいと絶賛してくれる。

 私はその商品を手に取り、レジに向かう。

 明日渡すのが楽しみになり、太陽くんが喜ぶ姿を想像して、ニヤケそうになる。

 喜んでくれるといいな。


 ******


story teller ~四宮太陽~


「誕生日おめでとう!」


 パンッとクラッカーの音が、2人きりの部屋に鳴り響く。

 今日は俺の誕生日で、月がお祝いしに家まで来てくれた。前日になるまで、誕生日と言うことすら忘れていたので、元々予定はしていなかったが、昨日の夜に月からメッセージが入り、2人で過ごしたいと言われた。


「ありがとう」


 月にお礼を言うと、喜んでくれてよかったと笑顔になる。

 今までに祝ってもらったのは家族と堅治くらいしかいないので、正直少し照れくさい。


「今日、夕方からバイトだよね?早めに帰るようにするね?」


 月は少し申し訳なさそうな顔で言うが、俺は出来れば少しでも長く一緒にいたい。

 そう思い、ギリギリまで大丈夫だよと伝える。


「えへへ、ほんと?嬉しい」


 そう言うと月は、俺にくっついてくるので、俺もそれを拒否することなく受け入れる。

 最近はバイトばっかりで、月とゆっくり過ごすのは久しぶりだ。


「月とくっつくとなんだが眠くなってくる。安心するのかな」


「なんだか子どもみたいで可愛いね」


 月は俺の頭を撫でながら、いつもお疲れ様と言ってくれる。

 普段は甘えてくる月が、逆に甘やかしてくれるのは、悪くない気分だ。というか頭を撫でられるのってこんなに気持ちがいいのか。


「まって、ほんとに寝そう」


「いいよ、バイト前には起こしてあげるよ」


「せっかく2人でゆっくり出来るから、起きてたい」


 そういうと俺は眠気を受け入れそうな体を頑張って動かし、その場に立ち上がる。座っていると寝そうだ。


「そういえば、プレゼントもあるんだ。受け取ってくれる?」


 月はカバンから小さな封筒を取り出し、俺に差し出す。

 俺はそれを受け取って、開けていい?と聞くと、うんと短く返してくれる。

 中でガサガサと音が鳴る封筒を開けると、中からネックレスが出てきた。


「これって、もしかして俺の名前に合わせて?」


「うん、太陽くんが私にくれたネックレスも月の飾りが付いてたから、私も太陽の飾りがついたものにしてみたの・・・」


 月は少し恥ずかしそうに顔を伏せる。

 お互いに月と太陽の飾りのついたネックレスをすると、おそろいみたいで嬉しくなる。


「ありがとう、ほんとに嬉しいよ」


「それならもよかった。付けてみて?」


 俺は受け取ったネックレスを自分の首に付ける。


「どう?似合う?」


「うん、似合う!これにしてよかった!」


 喜ぶ姿を見て、嬉しそうに笑う月を俺は抱きしめる。

 月は突然抱きしめられたことに驚き、俺の腕の中で太陽くん?どうしたの?と言っている。


「ごめん、ほんとに嬉しくて。なんか好きが溢れたというか」


「そういう事ならいいよ?はい、おいで」


 1度離れた俺を、今度は月が両手を広げて受け入れる体勢になる。

 俺はそのまま月の胸に顔を埋め、月の心臓の音に耳を澄ます。

 時間が経つにつれて、どんどんと鼓動が早くなるのが聞こえる。


「太陽くん、そろそろ離れて?」


「もう少しだけ」


「でも、その位置に太陽くんの顔があるのはちょっと恥ずかしいかも・・・」


 仕方がないので1度顔を離すと、月は顔を赤くして俺を見る。

 その顔を見ていると、なんだか興奮してくる。


「月、キスしていい?」


「うん、いいよ」


 返事を聞いて、俺は月にキスをする。優しく、押し付けすぎないように。


 そして、お互いに唇を離さずにベッドに座り、そのまま倒れ込む。

 そこで1度唇を離すと、月は恥ずかしそうにしながら、陽子さんたちは?と聞いてくるので、2人は朝から出かけてていないよと答える。


 俺たちはバイトの時間ギリギリまでゆっくりと2人の時間を過ごした。

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