262;我会永遠和你在一起.01(姫七夕)

「……ただいま」

「……おかえりなさい」


 今し方の二人の、いえ、一人の戦いは、〔修練〕の一環だとしてシステムには扱われたようです。

 そうでなければ七月くんが光となってジュライに吸い込まれて行ったあの現象を説明出来ませんし、でもそれだとまた別の問題と言いますか、疑問も生まれてしまいます。


 ジュライの中には果たして、どれだけの魂が満ちているのか。


 でもそんなことは今のぼくにはどうだって良くて。

 ただただ、帰ってきてくれたことが。戻ってきてくれたことが、心から心から嬉しいんです。


「ひどい再会だったからな。しかし――よく戻って来てくれた」


 アリデッドさんが溜息混じりに破顔します。そのロケット型の顔に微笑みを返して、ジュライは再びぼくを見詰めました。

 そして――――


「っっっ!?」


 え、え、えええええ!?!?


「「「「「!?!?!?!?」」」」」


 ななななんと、ぼぼぼぼくにだだだ抱き着いて来たのです!


「ズズズズズズズライ!?」

「これからはずっと一緒にいます。時には離れることがあったとしても。遠くにいても、心はずっと一緒にいたいです。セヴン、」

「ジュ、――――はい」


 力強さを多分に含む静かな言葉に、ぼくの心臓は張り裂けそうな程に高鳴りました。

 ぎゅうと強く抱き締めていた腕が離れて、目と目とが合う遠くて近い距離が、ぼくと彼との間にありました。


「僕は、君が好きです」

「……我更愛你」

「セヴンが思うよりも僕は、君のことが好きです」

「我比你愛我更愛你!」

「僕は君といると心がほわっとします!」

「和你在一起的時候我総是很温暖!」

「君から離れている間、ずっと何かが足りないことを思い知らされました!」

「无論我是否和你在一起、你総是譲我感到焦慮!」

「僕は頭がそこまで良くないですから、これからも何か大きな間違いを犯してしまうかもしれません!」

「如果你再犯錯誤、我会一次又一次地糾正你!」

「それでもこれまで以上に君を悲しませてしまわないように努力を重ねて重ねて重ねて、君が誇りに思ってもらえるような僕になります!」

「你過去是、現在仍然是我的驕傲!」

「償えるかどうかは僕が決めることじゃ無いですが、償えるよう、赦してもらえるようにこれからを精一杯生きます!」

「我会在離你最近的地方見証這一切!」

「だから、」

「……請告訴我、我想听」

「こんな、こんな僕ですが……僕ですが……」

「……」

「……セヴンと、……生きていき、たいです」

「…… ……」

「だ、……駄目、でしょうか……?」

「……北七!」

「え?」


 がばりと。

 がばりと、今度はぼくの方から抱き着きました。

 ジュライは北七バカです! 非常北七大バカです!

 駄目なことなんて、そんなこと、あるわけないでしょう!!

 何でそこで、何でそこで、『駄目、でしょうか……?』なんて萎むんですか!

 折角、折角、とてもとてもとっても格好良く、想いを、覚悟を、言葉にして伝えてくれたのに!!

 なんで、何でよりにもよって一番大事な――――


「没有什幺問題! 你為什幺不知道?」

「あの……その……えっと……えと……うぉ、――うぉー、あい、にー」

「っ! 我愛你!? 我也愛你!!」


 何ということでしょう!

 あのジュライが、あのジュライが、『我愛你』なんて!!

 堪らずぼくは彼の胸に押し付けていた顔を離して仰ぎ見ました。ぼくと彼はそこまで背丈に差がありませんから、直ぐ触れそうな近くにほんのりと赤く染まったジュライの顔があります。

 もう一人の自分との熾烈で劇的な戦いを終え、傷付き疲れ果てている筈なのに、こんなにもこんなにも綺麗で、カッコよくて――――

 その顔に、ぼくは――――


「あー、ストップストップ。頼むからその先はマジで二人っきりの時にやってくれ」


 っっっ!!


「おいおいアリデッドよ、無茶苦茶いい場面で止めやがるじゃねぇか」

「いやアリデッド君、君はよくやってくれたよ。私とて弟弟子のそういう場面シーンは正直目の当たりにはしたくなかったのでな」

「あらぁん? ミカちゅゎん、もしかしておジェラぁん???」

「あ゛?」

「まぁまぁ兎に角――そろそろ全体会議も始まっちまう。ミカ、移動手段はあるんだろうな?」

「ダルク。済まないがもう一度言ってくれないか? 誰が誰に嫉妬ジェラシーを、だって?」

「えぇん? だってミカちゅゎん、絶対にそういうのGO☆BU☆SA☆TAでしょぉん??」

「髭ぇぇ!!」

「おーい、ミカ? ミカー? ……お前らも相当仲良過ぎだよな」


 はぁー、ドキドキドキドキが止まらなくて顔が熱い熱い!

 でもそれはジュライも同じようで――――そうですね、その先は、ちゃんとぼく達二人だけの時に。

 もう、お互いの気持ちは分かったのですから。

 伝え合うことが、ちゃんと出来たのですから。

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