081;七月七日.06(綾城ミシェル/シーン・クロード)
『ミカ? そちらの状況はどうかしらん?』
スクリーンチャットの向こう側で、私の相棒である
私は煙草の煙を
「どうもこうも、今日もまたニアミス」
『あら、そうなのねん』
「ただ行先は仕入れた。だからこの後直ぐに追うつもり。そっちは? スーマンは見つかったの?」
『近くまでは来てると思うわん――でも、もしかすると、追い越されちゃうかもねん』
「そう……」
『でも当初の予定通り、アタシが先に見つけたら彼を拘束してとんずら、追いつかれるか追い越されるかされちゃったら――』
「――打合せ通りに。くれぐれも、一人で先走らないようにね」
『先走る!? やだぁ、もう!』
「違ぇよ……」
チャット画面を打ち切って、私は再び煙草のフィルター越しに煙を肺に吸い入れる。
この世界はいい――こんな風に堂々と、飲食店の片隅で食後の一服に耽っていても誰も迷惑に思わない。
その理由は二つある。一つは、そもそもこの世界に流通している煙草は、私たちが現実世界で喫するものと全く違うのだ。
魔力の源であるマナ――それが集積し圧縮されて凝固した結晶を磨り潰した粉末を可燃材と混ぜ合わせたものを紙で巻いたのがこの世界の一般的な紙巻き煙草だ。
戦闘を主務とする職業に就いている――例えば傭兵や騎士、後は私たちのような冒険者が戦闘後に急速に魔力を回復させたい時に用いるのが一般的な使い方だが、私のようにただの嗜好品として活用する者は貴族の中には多いらしい。後は冒険者の中にも。
そしてこの世界の煙草は、依存性も無ければ周囲への悪影響も及ぼさない。非常にクリーンで、だと言うのにちゃんと煙草の味がする優れモノだ。故に公衆の面前で喫煙する者を迷惑だと言う風に考えるという文化風習が社会の中に無いのだ。これが、二つ目の理由。
さて。吸い終えた煙草の火を灰皿に押し付けて消した私は立ち上がる。するとジーナが目ざとく話しかけてくる。
「あ、ミカさん。出発ですか?」
「ええ。今日も美味しいご飯をありがとう」
「いえいえ!」
「数日、もしかすると戻って来れないかもしれない」
「そうなんですね。無事戻って来れるよう、祈ってます!」
「ありがとう――ああ、もし私が戻って来る前にジュライが帰って来るようなことがあれば、
「あ、大丈夫ですよ」
「それじゃあ、お願いね」
「はいっ! 行ってらっしゃい!」
そして真昼の強い陽射しの中、【砂海の人魚亭】を出た私は駅へと路地を進む。
この冒険者ギルドは目抜き通りから程遠い、隠れた場所にある。普通はこんな冒険者ギルドには辿り着くはずもない。
つまりジュライは、誰かの手引きによってこのギルドで登録した可能性が高い。そしてそれは彼と常に一緒に行動をしている“セヴン”という冒険者だ。
ギルドスタッフやギルドマスターは自分のギルドに登録している冒険者の素性は基本的には明かさない。でも、それなりに仲良くなれば同じギルドメンバーの話はすることが出来るし、聞くことも出来る。
限界はあるけれど、現状ではこれが最良の情報収集だ。
本人と遭遇できれば、後は本人に確かめればいいだけだし。
「そろそろ追いかけっこも飽きて来たな……出来ればさっさと捕まってよね――牛飼七月君」
◆
「
管理者権限で呼び出した
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次でレベル50か……状況によってはこの遺跡の探索中に迎えるかもな。
何せ、遺跡の入口を守っていた
しかし大きさの割りに機敏で、両腕に備わった
しかも板金装甲には魔術耐性も施されていて、攻撃が全然通らないと来たもんだ――剣や槍といった斬撃を与える“切断属性”や刺突による“貫通属性”の武器は板金装甲に弱い。こういった手合いには打撃系の“破壊属性”の武器がいいんだが……
買い直した〈パルチザン〉の柄が金属製で助かった、って感じだ。石突での攻撃にも俺の槍スキルは有効だからな。
「
場所としては帝国と連邦のちょうど境界上。魔動機械の文明が盛んだった頃の要塞跡――【
スーマン、待ってろよ。お前を衛視に突き出して、俺は俺の無実を証明する!
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