083;七月七日.08(シーン・クロード)
「《
そして斬り上げた斬撃の白い軌跡に横薙ぎを重ね、以て十字の軌跡から光の砲撃を射出する。
十分に掻き回した上での背面からの一撃だ、防げてもまさか避けられないだろう――俺の目論見は成功し、躱せないと判断した
――ここだ。
「《
《
そう、ここで選択するのは《
「ほぅ――っ!」
普通、これ、二人以上でやる前提のシステムだからな。
そしてけたたましい金属音を響かせて、俺の怒涛の連撃を叩き込まれた
途端に立ち込める、咽せ返るほどの血の匂い――頭を振って、込み上げてくる気持ち悪さを拭い去る。
「――スーマン、いるんだろ?」
薄暗いそこに踏み入ると、途端にねっとりとした感触に足を捕らわれた。
見遣れば、ゴロゴロと転がる――盗賊たちの横たわる身体。穿たれ、切り裂かれ、血に塗れている。
同様に魔動機兵の残骸も散らばっている。
「何だこりゃ……」
「全く、同意見だわん♪」
気が付けば隣に
「――アリデッドか」
「スーマン?」
だだっ広い部屋の奥から聞こえてきたのは確かにスーマンの声だった。だがその抑揚や息遣い、そして言葉に含まれた感情は、本当に彼なのかという疑念を俺に抱かせる。
一度やり合い、そして二度共闘した。その程度の間柄だが、俺は人の顔と名前と特徴を覚えるのは得意な方だ。あれだけ顔を合わせて言葉を交わした相手を間違えることなんて無い。
「スーマンなのか?」
そして薄っすらと聞こえていた、ぴちゃり、ぴちゃりという水音。仄かに粘性を持った液体を掻いたような、不快な調べ。それが止まった。
「……お前、ここで何してたんだ?」
「何って……レベリングだよ。お前がしつこく追ってくるだろうから、迎え撃つためには強くならなきゃいけないだろう?」
そして奥の暗がりから部屋の中央へと歩み出たスーマンは、明らかに異様だった。
憔悴し切り血走った目、蒼褪めた肌――何より、ぬらりと照り返す赤色で施した
それ――血じゃ無いか?
「くふふ、ふくくふふくふくくふふふく、くは、くははは……」
「お前――どうした?」
「無駄よん、アリデッドちゃん」
「ちゃん!?」
「スーマンちゃんはもう、知ってしまったのねん♪」
歩み出で、そして構えを取る
しかしそれを確かめるのは今じゃない。今は、目の前に対峙する狂気に取り憑かれた男をどうにかする方が先だ。
「オタク、まさか俺と一緒に戦ってくれようってのか?」
「あら忘れたのん? アタシの狙いも彼なのよ? つ・ま・りぃ、早い者勝ちってことぉん♪」
「クソが……
部屋の広さは10メートル四方くらいはあるか? 高さも廊下よりは全然――目測だが7、8メートルくらいだろうか。
その中央に立つ奇怪な笑みを浮かべるスーマンは、腰に下げた両の鞘からそれぞれ紫色に濡れた短剣を抜き放ち構えると、声高に叫び上げる。
「――《
その瞬間、スーマンの足元から立ち昇る赤い気流はその身体を包み込み、激しく燃え上がった!
赤熱する空気が焦げ臭い匂いを放ち出し、そして炎の化身となったスーマンがかはぁと嗤う。
“
《
全身が炎になった“
さらに、
反面、魔術ダメージへの耐性が弱まり通常時のおよそ二倍に膨れ上がってしまうという
俺は
Fxxk――俺、このゲームの魔術――特に
幸いなのは《
だから初めから出し惜しみなんかしない。自らの奥底から魂を引き上げるように俺は自らのアニマを解き放ち、《
「じゃあアタシも――イっちゃうわよぉ!」
そのまま逝去でもしてろ――と思ったら、この
大きく広げた両手とは対照的に、真っ直ぐぴたりと閉じた両足。十字架を象る身体が浮かび上がり、その背には白く輝く光そのもので編まれた双翼が――
ニコと同じ、《
そして光の両翼を広げ未だ空中に浮かび上がっている
「ダルクちゃん、“
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