257;月と影.08(千葉懸/綾城ミシェル)
「千葉、お前はどう見る?」
「ん? どっちが、的なやつ?」
目の前の空間を凝視しながら問い掛けるもんだから、オレに言ってんのかって反応遅れちまったよ。
さぁて、どうだかねぇ――と勿体ぶろうと首をぐるりと回したせいで、その肝心な場面を見逃した。
「がぁっ!?」
短く悲鳴じみた叫びが上がった。
だってぇのに、空間の中心にいるジュライはその場から動けていない。
ただ異変は感じ取ったみたいで、次にオレ達がそうしたみたく、その叫びの出所を真摯に見詰めていた。
「ぎっ!?」
次の叫びは、反対側から聞こえた。
「ぎゃっ!」
「なぁっ!?」
次とその次は、殆ど同時だった。
「何が……?」
ぐるりと視線を周回させる。
至る所で悲鳴と共に飛沫が上がり、さめざめと降る雨粒が一瞬赤く咲いた。
「やめろ」
ジュライの制止は呟いた程の声量にも関わらず強く鼓膜を突き抜ける。
だけど
「「「なら止めてみろよ」」」
少なくとも、三か所から聞こえて来た――その
確か――あっちのジュライ、いや牛飼七月は、《
まぁそういう芸当が出来るスキル構成は確かに《
恐らくは《
出て来ながらは攻撃出来るけど、潜ったままじゃ出来ない。つまり《影潜り》ではない――あーっと、《
レベル的に、アルマ由来のスキルだけじゃ今この状況は生まれないわけだな。
するってーと……一番ありそうなのは〔修練〕由来のスキルか。
その《隷剣解放》もスキル構成によっちゃイケるか? 《解放》はぶっちゃけあんま調べてないんだよなぁ、立花だったらよく知ってそうだけど。
《マスカレイド》か《解放》か《秘伝》か。それとも〔修練〕ですら無い、別の何かか。
いやぁ、楽しいねえ!
◆
「ルメリオ!」
「あーいよ」
だがそもそも
ここは戦場だ。その振る舞いを卑怯とは断じなくも、降り掛かる火の粉は払わねばならない。
「
「んー、それって僕ちゃんの仕事っすかねえ? 最近僕ちゃんのこと小間使いか何かだと思ってません?」
「お前一人でやれとは言ってない」
「なるほろひれはれー。しゃーねーっすねぇ、兎に角
そして足元からコンソールを立ち上げては、中空に浮かぶ
「でもなぁー、折角の七月きゅんの考えに考え抜いた策っすからねぇー。防ぐんじゃ無く、
タンッ、と指が跳ねる。
喧騒の最中にある
確かにこの手なら、七月に攻撃された者の傷は自動的に癒えるが……
思う通りに動いてくれない――――だからこそ、この男は頼りになる。
「さぁて」
またべろりと舌が唇を濡らす。
「まだ俄然分は悪いけど、どぉすんのぉー? 七月きゅーん?」
無論、まだ二つか三つの波乱はあるだろう。
だが恐らくは――この戦いは詰まる所、スキルとトリックの代理戦争になるだろうな。
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