077;七月七日.02(牛飼七月)
セヴン――いえ、ちぃちゃんはこのヴァーサスリアルというゲームにログインしている間、特定の思考を持った際にあの
辛うじて、僕とフレンド登録をしたいという思考と、そして僕の妹である七華のことに対する思考を持った際に
彼女がそれを説くその合間にも、次々と
これでも幼少の頃からひとつの武道に身を捧げて来たのです。僕の脊髄にある神経は僕の託した通りに、
切々と話すセヴンの声は段々とか細くなっていき、そしてその顔は見る見るうちに貧血の如く蒼褪めていきます。
彼女が体調を悪くするのに比例して、僕の心には遣る瀬無い怒りが沸々と込み上げて来ました。ですから、セヴンの語る口が結ばれるその直前には、本当に本気で
腰に軍刀を納めた鞘を帯びていたのなら。
確実に僕は、ボックス席のシートごと
『ツェンリア駅~、ツェンリア駅~、お降りの方はお忘れ物にご注意下さい~』
「セヴン、大丈夫ですか? 立てますか? 歩けますか?」
「……ごめんなさい、肩、貸してもらっても」
「勿論ですっ」
僕はぐったりとし始めた彼女の両手を取り、持ち上げたその腕の下を潜る様にして身を反転させると、なるべく負担のかからないよう慎重に彼女を背負いました。
セヴンは肩を借りての支持搬送をイメージしていたみたいなので吃驚していましたが、そんな状態のセヴンを歩かせるほど僕は女々しい男ではありません。
「プギィ……」
「モモ、心配ですよね。僕もそうです。……セヴン、ホームのベンチで少し休みましょう」
ぷひぷひと鼻を鳴らしながら着いて来るモモと、その頭上をふわふわと漂いながら追従するバッカルコーンと共に、僕たちは列車からホームへと降りるとゆっくり足早にベンチに向かい、そしてそこでセヴンを下ろしました。
「売店でお水を買って来ますね」
「……っ、」
具合が悪い筈なのに。気分が悪い筈なのに。
なのに――何でセヴンが僕の袖を掴む手の力は、こんなに必死なんでしょうか。
「……ゃ、だ。一緒に、いて……」
潤んだ瞳は僕の足を完全に止めました。
セヴンは卑怯です。僕は少しでもセヴンの体調が良くなるよう、お水やお茶なんかを飲ませてあげたいのに――そんな顔で手を掴まれたら、何処にだって行けないじゃないですか。
「……分かりました。何処にも、行きませんから……ね?」
冷たい汗の浮かぶおでこを拭ってあげると、熱に浮かされたような苦い顔がほんの少しだけ綻びました。
やはり症状としては、貧血に似ている気がします。
思い返せば七華も、よく貧血でふらついたり倒れたりしていたものです。急に目の前が真っ暗になって、全身の力が抜けてしまって、ただただ重力に従って落ちるだけ――そんな風に言っていたのを思い出しました。
――あれ?
七華のことを思い返したと言うのに、
「セヴンちゃん!?」
「えっ?」
ぐったりと
小柄で、そして歪な女の子が目を丸くして僕たちを見詰めています。
胸元まで伸びた銀髪と同じ色の獣の耳が頭頂部に立っていて、露出度の高い肌にはほぼ全身に奇怪な紋様が描かれています。これは……
腰の向こう側にはこれまた銀毛のふさふさ尻尾が覗いており――この特徴は完全に、セヴンの言っていたアイナリィさんと合致します。
「あの、もしかして、アイナリィさん、ですか?」
「もしかしなくてもそうや! うちがアイナリィや。君、ジュライ君やろ? ランキング入りおめでとさん。そないなことより、セヴンえらい具合悪そうやん、大丈夫なん!?」
その顔は真剣に彼女の身を案じている表情でした。
渡りに舟とはこのことです――どうして彼女がここにいるのか、きっと僕たちよりも先にツェンリアへと着いていたから待っていたのでしょうが、とにかく僕は彼女に水かお茶を売店で買って来てほしい旨を伝えます。
「了解、ダッシュで行って来る!」
何とも気持ちのいいコです。あの時あんな風につっけんどんとした顔をしていたコとは思えませんし、人は見かけに依らないという言葉の真実味を僕は再確認しました。
きっと、こういった遣り取りが無かったなら――僕は彼女の見た目から色の付いた眼鏡で彼女のことを見ていたことでしょう。正直、見た目だけで言うと
◆]kえi告。
現jいツに悪ei響wお及bおス行dおu意sひアrい[◆
◆]プrえiyアーロsうトnオ恐rえがaりmあス[◆
なっ――何ですか、これは!?
これ……
ビヂビヂと輪郭にノイズを滲ませながら遅れて出て来た
出現した後も、座標がほんの少しブレたり、表示自体が時折明滅を繰り返したりと、まるで何かのバグのような――――バグ?
「っ!」
僕は咄嗟に、駆け出して行った彼女の方へと振り返りました。
確かセヴンが言っていました。レイドクエストで仲良くなった彼女は、
自分の心臓が高鳴っているのが嫌でも判ります。
凝視する先で、彼女が走って戻って来る姿が映り出しました。確かめるように僕は再び
◆]kえeeえiこkkkkkkkkkうウうう。
gえnnnnnjいtsウウウにアkうeikYおウwお及及及bおススス行dおuイsひアrrrい[◆
◆]プrププrrrえiyアーrrrrrオsウトトトnオoSおrえがaRいmああああスス[◆
バグが、酷くなっています――僕は確信こそ未だですが、この現象に一つの仮説を打ち立てました。
もし本当に、あのアイナリィさんの
このゲームのシステムそのものに、影響を与えているのでは無いでしょうか。
「
「ありがとうございます……セヴン、お水です。飲めますか?」
アイナリィさんから店外持ち帰り用の水袋を受け取り、その飲み口をセヴンに向けて差し出します。
少し休んだことで落ち着いた様子のセヴンは、申し訳なさそうな表情で口をつけます。僕は手を添えて水袋を持ち上げるのを手伝いました。
「堪忍な、うち、治癒魔術使えへんねん」
「治癒魔術?」
「せやで? この世界の治癒魔術言うんは、一時的に生命力を極端に増幅するもんやねんから、使える人がおったら使ってもらった方が、こんな風に具合悪くなった時にもええねんで?」
「そうなんですか……治癒魔術……凄いんですね……あっ!」
「何や急に」
「……セヴン、ごめんなさい」
忘れていました。
僕、クラスアップして
慌ててFランクの治癒魔術【
「何や使えるんかい」
「すみません……気が動転していて……」
「無理も無いですよ、ぼくがジュライだったとしても、きっと同じことやっちゃってたと思います」
すっかり、とは言えませんが、取り敢えず元気を取り戻したセヴンは僕に感謝と労いの言葉をくれました。アイナリィさんにも。
もっと気を引き締めていなければいけません――僕は、この先も彼女と一緒に居続けたいのですから。もっとちゃんと、彼女を守れるようにならなければ。
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