019;遺跡の奥に眠る夢.06(姫七夕)
いくらリアルチートを有していると言っても、ぼくの場合はナツキくんと違ってこのゲームのシステムに依存しているわけで……
そして《
魔術には
ぼくが今現在所有している〈初級詠唱教本〉のランクは“F”、そして〈初級詠唱教本〉に記述されている魔術の
これに対して、現在5レベル――遺跡に入ってからの戦闘でまた一つ上がりました――であるぼくの《
ぼくは
しかし
ぼくが
ちなみにサンドゴブリン戦で行使した《
さて。前置きが長くなってしまいましたが、今度の相手は
ガイストの弱点属性は火属性ですが、この【アストラリス遺跡】の内部は水属性の
ならばどうするか――切り札というのは、こういう時に切るものです。
「――《
自分の内側にある温かな拍動――《アニマ》を意識しながらぼくはそう呟きました。
すると周囲のマナとぼくの内側のマナが共鳴し合い、仄かに翠色に色付いたそれらはぼくの表皮から立ち上っては頭上に鹿の雄大な角のような魔術式を構築します。
同時に、ぼくの
《
しかもそれだけではありません。レベルが5に上がったことでぼくの《
少し驚いたような表情をしているジュライに目配せすると、彼は顔を引き締めてひとつ頷きました。
さぁ、詠唱に入ります。選んだ魔術は勿論火属性、溌溂とした謳い文句のような
「――燃べろ燃べろ燃べろ命を燃べろ
呪に抗いて 逆巻く煙
明滅する昏迷 赤熱する恩恵
朱雀の空が 翻り墜ちる――」
最終節を
騒音に振り向いたガイストたちが双眸を赤く輝かせて敵意を剥き出しにします!
でも、ぼくの方が速いです!
「――《
言葉に載せたマナを解き放つと、ぼくの口から飛び出た音の波は火の粉を纏いました。
チリチリと迸ったそれは、起点となる部屋の中心の座標に舞い落ちると火柱となって天井に噴き上がり、八方へと飛散して
同時に、地面を火柱から伸びた火線が走り、檻を構成する炎と合着すると檻の中を縦横無尽に炎が跋扈して蹂躙します。
「ヲヲヲ――」
「アアア――」
業火が迸る轟音に掻き消され、ガイストたちの断末魔は殆ど聞き取れません。
そうして10秒ほどが経ち、火勢が衰えて紅蓮の檻が消失すると、地面も壁も天井の焼け焦げて黒くなった部屋の中に、一切の敵意が消えていました。
「……やりましたか?」
「ジュライくん、それ、死亡フラグですよっ」
《
《
さらにこの場所は水の
ですが《
そして同じく《
60%の効果、それでもガイストを倒し切る程度には
ぷわん……〈
一番奥の棚の引き出しを開けると、乱雑に詰め込まれた資料の奥でぼくの目当てのそれは白く耀きを纏っていました。
手に取り握ると、ぐゎっと力が漲る感触が全身を走ります。
「あったんですね」
「はい、ありました! 良かったです……」
正直、10年前にこのゲームをプレイしているとは言え、リメイクされた今作が全く同じというわけではありません。
マップは変わっていますし、クエストにも覚えの無いものだってありました。細かい調整もされているみたいですし。
ですから、この部屋に本当にこの〈
透明な硝子の内側にコバルトブルーの流線を孕んだそのガラスペンを、ぼくは胸に押し付けてぎゅっと抱き締めました。
「じゃあ、行きましょうか!」
「はいっ」
後はこのクエストをクリアするだけです。事前に手渡されていた〈製図用紙〉に隠しエリアの地形を書き連ねていく、それだけなのです。
しかし勿論、書き連ねるには踏破する必要があります。まだ
それに、クエスト途中でぼくたち二人ともが意識を失ってしまうと失敗となり、登録した冒険者の宿まで強制的に引き戻されます。ここで入手したアイテムも失ってしまいますし、報酬ももちろん貰えませんし。踏んだり蹴ったりなのです。
ふんすと鼻息荒く意気込んで、ぼくは新たに手に入れた〈
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