074;クラスアップ.03(姫七夕)

「セヴン、三次職テルティア以降の違いは分かりますか?」

「うん、《サムライ》がですね――」


 レベル80で発生する三次職テルティアへのクラスアップ、《サムライ》は豊富な属性攻撃を得られ狂戦士的な側面を持つ《村雨ムラサメ》と、攻防がバランス良く共に高まり更に継戦能力に優れる《正宗マサムネ》、そして豊富な武器種と戦型スキルを獲得できる近接戦闘のスペシャリスト《弁慶ベンケイ》に分かれます。


 一方の《シノビ》は、隠密性が更に高まり暗殺者としての側面を強く発揮する《シャドゥ》と、戦型スキルを成長させ物理攻撃と魔術攻撃の両方がバランスよく成長する《アカシャ》、そして機動力が著しく上昇し空中戦闘に傾倒する《遮那シャナ》の三つに分化します。


 ぼくは一応、ジュライには《サムライ》になってもらい、そこから《村雨ムラサメ》に行くのがベターかな、と思っています。最終段階であるレベル150の四次職クァルタはまだ開示されていませんから――十年前のオリジナル版では三次職テルティアまでしか無かったのです――そこから先のことは解らないのですが……


「うーん……先のことを考えると、どうでしょう……」

「あ、でもジュライ。二次職セグンダ以降は、クラスアップの際に一つ前の段階からやり直すことも出来るんですよ?」

「え、そうなんですか?」


 はい、そうなんです。

 二次職セグンダから三次職テルティアにクラスアップする際、二次職セグンダをもう一度やり直すことが出来るんです。

 例えばジュライだったら、《シノビ》にクラスアップしていざ三次職テルティアへとさらなるクラスアップをする際に、やっぱり《サムライ》が良かったな、やり直したいな、と思う場合には三次職テルティアにクラスアップせず、二次職セグンダである《サムライ》に変更することも出来るんです。


 その代わりその時点で獲られている経験値は半分になりますから、レベルは大体60からリスタート、となります。ちょっと勿体ないですが、でもやり直しが効く、というのはかなりいいシステムだと思います。


「それなら……セヴンには申し訳ないんですが……」

「はいっ」


 そしてジュライは、ぼくの希望とは別の、《シノビ》を選びました。

 ジュライにとって装備できる防具の種別が増えることはそこまで重要じゃなく、一番執心していたのは星霊魔術スピリットマギアを修得できる点で、想像している通りだとすれば三次職テルティアも物魔双方が成長する《アカシャ》を選びたい、と話してくれました。


「その……魔術攻撃が出来るようになれば、僕とセヴンで、絶命の一撃フェイタル狙えるようになるかな、と思って……」

「はい……え?」


 絶命の一撃フェイタル――それは致命の一撃クリティカルよりも強力な、まさしく時と場合そして相手によっては命を削り取ってしまうほどの大ダメージですが、それを出すのには条件があります。

 そうです、邪竜人グルンヴルドの頭部を破壊した時のように、二つ以上の同じ種別の攻撃が、同じタイミングで叩き込まれることでそのダメージは合算されて膨れ上がり、強力な絶命の一撃フェイタルとなるのです。


 勿論それは魔術攻撃にも起こり得ます。詠唱魔術チャントマギア星霊魔術スピリットマギアであれば、そうですね、ぱっと思い付くところだと《大渦の顎メルシュトレム》と《宝瓶の嘆きアクエリアス》なんかは同じ水属性ですから、タイミングを見計らえば絶命の一撃フェイタルが狙えると思います。


「そしたら……これまでよりも、もっと、“一緒に戦ってる”って感じがしませんか?」


 この子ジュライったら――!

 ヤバいです、心臓が痛いです、高鳴り過ぎです! え、待って下さい、本当にドキドキが止まりません!

 嬉しすぎてニヤニヤしてしまいそうです! 顔が好湯あっつい! 好湯あっつい


 慌てふためき嬉しさのあまり小躍りどころか激走してしまいそうな心をどうにか抑えつけ、ぼくは恥ずかしさのあまり直視できずに何とか首肯しました。

 きょとんと首を傾げながらもぼくの肯定を受け取ったジュライは、鏡に向き直って《シノビ》を選択します。


 実際、《サムライ》で初期に修得する《飛翔閃》は無属性の魔術攻撃ですから、ぶっちゃけて言ってしまうとぼくの詠唱魔術チャントマギア戦ぐ衝撃ルインバースト》と競合するんですよね……つまり、《シノビ》じゃなくても絶命の一撃フェイタルは狙えると言いますか、寧ろ《サムライ》にしてくれた方が狙いやすいと言いますか……


 でもジュライがそんな風に考えて自分で選択したのですから、そこに異論を挟むというのは野暮と言うものです。

 大丈夫です、いざとなったら三次職テルティアに届く時にやり直せばいいのですから。何度だってぼくは付き合います。



◆]《シノビ》でよろしいですか?[◆



 ジュライが再度振り向きました。鉄面皮とも言われる無表情ですが、ぼくには一抹の不安がそこに宿っていることがはっきりと判ります。ですから、もう一度大きく頷きました。

 きっと、ぼくの意見と違うものを選ぶことが気になっているんでしょう。なので、ぼくは満面の笑みで送り出すのです。


「……《シノビ》で行きます」



◆]《シノビ》を選びました[◆



 これでクラスアップも終わりです。

 さて、クラスアップを果たしたら、漸く自分の能力値ステータスの確認です。

 一次職プリマのレベル上限は30でしたから、クラスアップを行うまでは正しい能力値ステータスは確認出来ませんでした。

 もうぼくたちは互いに二次職セグンダを獲得しましたから、レイドクエストで得た経験値の結果がどう反映されているのか、とても楽しみです。


「そうだジュライ、見せっこしませんか?」

「見せっこ……能力値ステータスのですか?」

「はいっ」


 ジュライはにこりと微笑み、「勿論」と短く返してくれました。

 そしてぼくたちはそれぞれの自室へと戻る手前のこの共有された空間で隣同士並んで、お互いの能力値ステータス画面を目の前に表示し合いました。



◆]セヴン

  人間、女性 レベル38(+12)

   俊敏 8(+1)

   強靭 7

   理知 19(+3)

   感応 17(+4)

   情動 17(+4)


   生命力 119(+28)

   魔 力 323(+115)


  アニマ:王冠ステマのアニマ

   属性:木

   ◇アクティブスキル

   《原型解放レネゲイドフォーム王冠ステマ


  アルマ:呪言士インカンテイター第二段階セグンダ

   ◇アクティブスキル

   《詠唱魔術チャントマギア/C》up!

   《呪印魔術シンボルマギア/F》new!

   《ブックガード》

   《コンセントレーション》

   《レジスタンス》

   ◇パッシブスキル

   《元素知覚》

   《魔術強化Ⅱ》up!

   《早口言葉》

   《魔導書強化Ⅰ》

   《術具強化Ⅰ》new!

   《木属性特攻5%》


  装備

   〈中級詠唱教本〉

   〈鈷硝子コバルトガラスペン〉

   〈エレニア織の法衣ローブ〉[◆




◆]ジュライ

  人間、男性 レベル45(+17)

   俊敏 21(+7)

   強靭 16(+3)

   理知 13(+2)

   感応 14(+3)

   情動 11(+2)


   生命力 176(+59)

   魔 力 143(+44)


  アニマ:修羅ソウラのアニマ

   属性:月

   ◇アクティブスキル

   《原型解放レネゲイドフォーム修羅ソウラ


  アルマ:シノビ第二段階セグンダ

   ◇アクティブスキル

   《戦型:月華/C》up!

    《初太刀・月》

    《初太刀・繊月》new!

    《二の太刀・上弦/下弦》

    《三の太刀・望月/朔月》

   《戦型:雷哮/F》

    《初太刀・迅雷》

   《戦型:旋舞/F》

    《初太刀・円閃》

   《峰打ち》

   《残像回避》new!

   《星霊魔術/F》new!

   ◇パッシブスキル

   《刀術強化Ⅰ》

   《切断強化Ⅰ》

   《斬撃強化Ⅰ》

   《刺突強化Ⅰ》

   《貫通強化Ⅰ》

   《隠密Ⅰ》new!

   《機動強化Ⅰ》new!

   《跳躍強化Ⅰ》new!


  装備

   〈防刃アラミドジャケット〉

    ◇パッシブスキル

    《切断耐性5%》

   〈鋲底軍靴スパイクブーツ〉[◆

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