075;クラスアップ.04(小狐塚朱雁)

◆]アイナリィ

  人間、女性 レベル35(+16)

   俊敏 13(+4)

   強靭 7(+1)

   理知 16(+4)

   感応 14(+4)

   情動 15(+3)


   生命力 105(+33)

   魔 力 %’&〇〇(;#&(&$)


  アニマ:牙獣シーリオのアニマ

   属性:土

   ◇アクティブスキル

   《原型解放レネゲイドフォーム牙獣シーリオ


  アルマ:元素術士ウォーロック第二段階セグンダ

   ◇アクティブスキル

   《構築魔術ソートマギア/C》up!

   《物理障壁ウォール

   《魔術障壁バリア

   《コンセントレーション》

   《精神感応テレパシー》new!

   ◇パッシブスキル

   《元素知覚》

   《魔術強化Ⅱ》up!

   《障壁強化Ⅰ》

   《杖術強化Ⅰ》


  装備

  〈魔女の指先〉

  〈獣皮の水着〉

  〈黒革のロングブーツ〉[◆



 クラスアップ出来たんはそら大層嬉しいんやけどもやなぁ……何時になったらこのバグ直んねん。

 まぁええか、このバグあったおかげでクソ雑魚いレベルにも関わらずレイドクエストのランキング入り出来たしな。


 構築魔術ソートマギアはランクCまで上がったかぁ……ほんなら最大で九節まで構築ソート出来んねんな。ヤバいな、試し打ちしとぅて堪らんわ。よく使う組合わせは保存メモリーしとかんと頭追いつかなそうやな。


 さて。問題はこっからや――邪竜人グルンヴルド戦でうちはセヴンちゃんと一緒にあのほんまムカつく《カラミティストーム》で離脱リタイアしてもぅた。

 厄介なんは、ことやない――アリデッドお兄様と、フレンド交換してへんかったことや。


 やから今あのお兄様が何処におるんかマジで判らん。

 探しに行ったってもええけど、ヴァーサスリアルの世界は結構広い。お兄様はあないな格好しとるから前みたいに人伝に情報集めて詰め寄る言うんもええけど、完全に離れてもぅたからそれもコスパ悪いねんな。


 こう言う時はフレンドに頼るに限る。

 セヴンちゃんはお兄様とスクリーンチャットやってたし、あれはフレンド同士でしかでけへんからな。つまりセヴンちゃんに訊けばお兄様の居場所は一発ってことや。


 よっしゃ。思い立ったら行動あるのみやで! セヴンちゃんにメッセ送って――ってところで、ドアをノックする音が聞こえてきた。


「はーい?」


 ガチャリとドアを開けると、そこに立っていたのは老齢ながらも未だ衰え知らず、現役バリバリの屈強なボコボコした身体を持ったお爺ちゃん――うちのギルマスや。


「おいちゃん、何?」

「アイナリィ、漸く一人前レベル30に到達したな、おめでとう」

「おーきに。何や改まって……依頼クエストでも入って来たん?」


 おいちゃんことギルドマスター・レーゼンはんは深く皺の刻まれた顔をにやりと綻ばせて白く髭の蓄えられた口許を蠢かす。


依頼クエストでは無い。ただ、お主にとって非常に重要な話になるだろうからな――来い、下で話をしよう。既に

「全員?」


 顰めっ面をしてもそれはおいちゃんには届かない。

 そしておいちゃんは、うちが追加で問いかける前に背中を見せてスタスタと廊下を階段へと進む。

 せやからうちも、その大きく広い背を追ってロビーへと向かう。


 ロビーにはギルドに所属している面々がズラリと雁首揃えて思い思いの場所で待っている。

 壁にもたれかかる者、人数に対して少ないテーブルと椅子とに座っている者、ただ立っている者、地べたに胡座を掻く者。

 おいちゃんはその正面に位置すると、遅れてやって来たうちを一瞥する。やからうちも、その集団の隅っこの方に加わる。


「それでは始めよう!」


 柏手をひとつ打ち、おいちゃんが声を張り上げた。

 それまで乾いたような薄ら笑いや雑談を広げていた連中が剣呑とした雰囲気を醸し出す。


「いいかよく聴け! 星天教団中枢に忍ばせている仲間から報せがあった! 近日、星天教団は冒険者を含む全大陸民に通達を出す!」


 ざわざわとした喧騒が俄かに巻き起こり、やけどおいちゃんの続く怒号みたいな声がロビーに再び静寂を取り戻す。


「通達の内容は――」



 ――九つの封印が解き放たれ

   ツァーリ・シュバルにエンデがきた

   天と地、光と闇とはついに結ばれよう

   未だシュメラグの姿まみえぬのなら

   一なるシュバルはとざされたまま――



 さっきよりも行儀の良いざわめきがあちこちで沸き起こる。

 何や、まるで予言やないか――多分、そう思っとるんはうちだけやない。


「お前らも知っているかとは思うが――どこぞの阿呆が召喚した邪竜人グルンヴルド、あれが"九曜封印"の一端を担う"歳星サイセイ封印"だ。つまり九つの封印のうち、その一つはすでに解かれてしまった、ということだ」


 おいちゃんの言葉で喧騒の声は一際大きくなった。うん、耳が痛い。

 言うても、うちはどっちか言うたら止めようとした方やで? あのスーマン言うんがホンマの阿呆なんや。


「だが俺たちにとって封印もエンデもシュメラグもシュバルも関係ない」


 どよめきがピタリと止まり、うちを含めた皆の意識が一斉においちゃんに注がれた。

 黒く焦げた、傷跡だらけの硬そうな皮膚を艷めかせ、おいちゃんは不気味な笑みを浮かべて言い放つ。


「歴史は今、動き出そうとしている――そんな時には国のトップがすげ変わる、国と国とが協定を結ぶ、或いは戦争を引き起こす。そのような節目にこそ、我々は大いに暗躍する! いいか! 目を見張れ! 耳を欹てろ! 歴史の揺らぎを決して取り零すな! 歴史を揺るがす大仕事が直に舞い込む! 世界を裏で牛耳るのは俺たち【森の翁】だ!」

「「「おお!!」」」


 血気盛んな野郎どもが盛大に声を上げた。あかん、こないなノリにはついて行けへん。

 まずったなぁ……なんや面白そうや思うて冒険者ギルドやのうて暗殺者ギルドなんて入ってみたら、偉い怖い流れになって来とるやん。


「追って指示は伝える! 一先ずは以上だ!」


 これは……どさくさに紛れて抜けるに限る。

 そゆことでうちは連中の解散に合わせて身を隠しながらギルドの外に出て、急いで森の中に駆け込んだ。


 暗殺者ギルド【森の翁】の本拠地は森の中に建造された全時代の放棄された要塞を改装したもの。

 蔦がびっしりと覆った外観は天然の保護迷彩。おまけに侵入者撃退用の各種トラップがてんこもりで、迂闊には近付けへん。

 加えて、その居を構える場所は初心者には近付かれへん【マルムーアの幻樹林】――【アンベックの森・中層】から北に迂回して抜けるとあるんやけど、レベル30未満初心者にも解放されとる割に出てくる魔物モンスターの強さがえげつないねんな。うちはそない難儀な思いはせぇへんかったけど。バグさまさまやな。


 さて、メッセージメッセージ。

 セヴンちゃんに合流したい旨を伝えると、何やら今魔動列車で連邦に向かってるところやって返信が来た。そっか、固有兵装ユニークウェポン頼んでた、言うてたわ。

 やからうちも【ツェンリア】に向かってひとっ走り。実際にはいっちゃん近い【ガイランス】から列車に乗るけども。

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