252;月と影.04(久留米理央/ジュライ)
『兎に角、先ずは牛飼七月の動向を突き止めるのが先だ』
レイドが終わった早々に、
だから僕はかつての【
レイドを引き起こした【
だと言うのにレイヴンを打ち破り、そして彼のアルマを手に入れた牛飼七月は――――成程、
いつ手に入れたか判らない〈転移の
牛飼七月は新たに手に入れた《
何だってそんな最悪のタイミングでしゃしゃり出るかねぇ。
牛飼七月は《
いやぁ、吃驚したのはその後だって話――――『ルメリオ! 今だっ!!』なんて怒号、思わず《擬態》を解いて参戦してたところだった。
僕がその場に居合わせたことを、
解散を余儀なくされた【菜の花の集い】の生き残りであるスノードロップを捕らえ、ジュライとセヴンとに指示を出しては再び〈転移の
何とも陳腐なブラフ合戦なんでしょ――――でもそうじゃなかったら、僕が嫌々ながらもこの身を挟みこむ余地は無かったわけで。
牛飼七月はその場に僕はいないと確信していたようだったけれど、でも僕はちゃんと居合わせていた。
『もし牛飼七月が〈転移の
簡単に言ってくれるんだもんなぁ……アイテムの消費から実際の移動までのタイムラグ、どれだけ短いか解ってます? って話だよ――――まぁ、出来ちゃうのが僕だけど。
「――意外と、早かったな」
「は――――ぁ?」
僕にとって見れば、そのラグであと三つはコードを重ねることが出来た。だから
その時点で既に、僕は毒を彼に
「牛飼流はその全てが戦場に於いて命を拾い、命を奪うために研鑽された戦闘術。ならば、お前を欺き毒を盛って命を奪おうとも、それもまた牛飼流だろ?」
「っ、――――っ!」
幕切れはいつも、思った以上に呆気ない。何だこんなもんか、がいつもの感想。
でも、この時ばかりは違った。この時ばかりは、まさか僕が施した
◆
極彩色の渦が盛大に罅割れて、僕達はその訓練場のような広い空間の中心に降り立ちました。
「ジュライっ!?」
「――ミカさんっ!? え、どうして?」
そして気配に振り返ると、そこには片膝を着いて歯を食いしばる、
遠くで
「……成程、管理者権限か」
「そっちは開発者権限だっけか? ある程度出来ることは似通ってるようだな」
返しながらも、アリデッドさんの鋭い視線は
「スノードロップさんは?」
「ちゃんと無事だよ。今頃は僕ちゃんの部屋で、一人おろおろしてるんじゃない?」
「セヴン」
セヴンはこくりと頷き、ルメリオさんに近寄ります。それだけで言わんとしていることを察したルメリオさんは、くるりと踵を返して案内を始めました。
「……彼の、状態は?」
「……[朦朧]だな。神経系の毒を」
「いつ解けますか?」
「ルメリオが戻れば直ぐにでも。いや、一応私の《
ゆっくりと振り返り、僕は
彼は毒に犯されていると言うのに、身体中の
「――決着を、つけましょう。ナツキ、僕と君の、どちらが王で、どちらが奴隷であるかを」
ですがその時は今ではありません。
互いに傷を癒し、万全の状態で――――共に、正々堂々果たし合うために。
「ならば、3時間後でどうだ?」
「分かりました。この場所を使っても?」
ミカさんは首肯します。そして、壁に立てかけられていた一振りの軍刀を取ると、僕に差し出しました。
「牛飼流にも適応できるよう、柄と重心は調整してある」
「ありがとうございます」
それを腰に帯び、僕は
「全身全霊で、仕合いましょう」
「っ、――殺して、やる」
「それで、構いません。ただし僕が勝ったなら、君は僕のために生きてもらう」
「――――っ!!」
発狂した猫のような息遣い。でも、何一つ怖くなんてありません。
「ならば私が立ち合おう」
「ありがとうございます。でも、余計な横槍はしないで下さい」
「余計な、ね……」
「はい。僕と彼との決着は、僕と彼で着けます。ですから」
「分かった。何もしないと誓おう」
「……はい。ありがとうございます」
そして僕達は互いに異なる部屋へと案内され、【
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