第199話え?古今の女子高生言葉訳?
私、真由美にとって、田中朱里はどうでもいい女だ。
多少、可愛いとか、スタイルがいい、そんなことで愛しの祐君がなびくことはない。(祐君の田中朱里への視線でわかる、今までの言動でわかる、美人慣れしとるかも)
でも、救いを求めて来た田中朱里を駅まで迎えに行こうと、さっとアパートを出た祐君は、かっこよかった。(博多の男みたいな、骨っぽさも感じた)
でも、純子さんは、立派だ。(あのふくよかな胸!そして包み込むオーラ)
田中朱里のように、私も包み込まれたくなるが、まあ、簡単に実現できることではない。
新宿中村屋のカレーは、伝統に基づく定番の美味しさ。
祐君も、並みの量を食べた。(本当は三人前だったけれど、田中朱里の飛び入りで、一人分が減った)
食後は、祐君をメインに食器洗いやら。
(田中朱里は、さすが名古屋嬢、何の役にも立たなかった)(祐君は、純子さんよりも、私よりも手先が器用、きれいに洗うし、拭く)(食器洗いも、拭きも、実に絵になるし、楽しげにこなす)
食後は、祐君訳の古今和歌集の点検作業。(他の大先生の現代語訳三冊と読み比べをした)
祐君
「今の日本語、若い人にも読んでもらうことを意識して、現代語訳しました」
「禁句としては」
「~である」「~であるよ」「~であるぞよ」「~だわい」「~であることよ」「~であることよなあ」
「を意識しました、だから使っていません」(そうだね、そこを変えるだけでも、かなり違う)
純子さん
「本当に、祐君の訳のほうがいいね。大先生の訳は、間違ってはいないと思うけれど、言葉遣いが、固過ぎて嫌」
「古今そのものを嫌いになる」(うん、私も同じことを思う、先に言われた)
私
「祐君の訳で問題ない、きれいで、いい感じ」(また、言葉が短い、相変わらずの直球女だ、もう少し続けたいと思う)
田中朱里は、こういう作業は初めてらしい。
「こんなに違うんですねえ」(少々ピンぼけな反応、予想通り)
祐君
「時々、今の歌謡曲とかポップスでも同じ内容のことを歌いますよ」
「特に恋は、そう思う、今後意識して聞いて欲しい」(・・・その視点はなかった、古今とポップスは別物と思っていた、でも男女の歌としては、同じ)
全員が頷くと、祐君は少し恥ずかしそうな顔。
「その恋愛の和歌を、今の女子高生風にしたら、どんな感じかな」
「僕は、どうしてもできなくて」
純子さんの目がパチクリ。
「お・・・まだ・・・できるかな」
私は、胸がドキン。
『祐君訳の別に?やりたい・・・もう大学生だけど』
田中朱里は、ついてこられない。(名古屋嬢は、今時の女子高生の言葉は知らない)
祐君はクスッと笑う。
「無理だったら、恵美ちゃんに言うかな」
純子さんが、ムッとした顔。
「まだ、女子高生できますよ」
私も負けない。
「セーラー服着られるし、サイズ変わっていない」
田中朱里は、目が輝いた。
「はい、セーラー服ならOKです」
祐君は、横を向いて、プッと吹いている。(その小憎らしさも、可愛い、惚れた)
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