第147話またしても恵美と美咲の堂々巡り

祐の従妹恵美は、駅前のドーナツショップで、またしても美咲に泣きつかれていた。


美咲

「祐さんに逢いたいよ、だめ?」

恵美は、厳しい皮肉。

「健治の彼女になれば?」

「健治は、みんなにそう言っているし、美咲は俺の女って」

「いいじゃない、野球部のエースの彼女なんて、校内カーストでもトップクラス」


美咲は、涙声になった。

「恵美・・・マジに意地悪だよ」

「性格悪過ぎない?」

「私は祐さんがタイプなの、ブログで知ってから、ずっと王子様だもの」

「健治なんて、あいつが勝手に言っているだけ」

「すぐに暴力振るいそうになるから、大人しくしているだけだって」


恵美は、そう言われても厳しい。

「それは美咲がビシッて言い切らないのが悪い」

「私は、他に好きな人がいますって」


美咲は、声を震わせる。

「健治の性格知っているでしょ?あいつ、しつこくて、しかも切れやすくて、喧嘩早いの」


恵美は、美咲の「考え」を察した。

「下手に言うと、祐ちゃんのアパートとか大学に押し掛けるってこと?」

美咲

「うん・・・何をするか、どんな暴力するか、わからないもの」

恵美

「でも、そんなことしたら、甲子園どころか、地区大会だって出られないよ」

美咲

「いやいや、健治は怒ると、そんなの関係ない、何をするかわからない、この前もスマホ取り上げられて、履歴とか見られそうになった」


恵美は、美咲がかわいそうになったけれど、どうしても祐を美咲に逢わせたいとは思わない。

どう考えても、トラブルになる予感しかない。

だから、「あきらめさせる」次の手を発動させた。

「でも、美咲、もう無理と思う」

「祐ちゃん、早くも美人で賢い彼女候補が二人いる、両方とも祐ちゃんに気がある」


美咲の声が震えた。

「マジ?何で教えてくれないの?」


恵美は、冷たい返し。

「言う必要あるの?美咲より、繊細な祐ちゃんに役立ちそうだもの」

「それとね、両方とも、縁がある人、いい感じ」


美咲は、涙グジュグジュになった。

「嫌、そんなの、健治にまとわりつかれて苦しんで」

「そのうえ、祐さんとも逢えないの?」


恵美は厳しい。

「うん、逢えない」

「健治の暴力の話を聞いたら、従妹として、逢わせられない」


美咲

「嫌、そんなの、逢いたい」


恵美の返事は、変わらなかった。


・・・で・・・いつもの堂々巡りになってしまった。

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