第291話「祐君は大人に?」真由美、純子、それぞれの思い 古文学者の不穏と祐

私、真由美と純子さんは、「祐君とジュリアの一夜」について、話題にできなかった。

(ためらってしまったし、聞き出してどうなるの?もあった)

(祐君の性格からして、ジュリアを押し倒すのは無理、は純子さんとの共通見解だったし・・・)

(結局、あいまい、だけど、不問に処す、で結論とした、先に進もうと)


祐君は、黙ってトースト、目玉焼き、サラダの朝食を食べている。

(少し、けだるいような、それでいて、スッと落ち着いた感じ)

(どことなく、艶も感じる・・・私の妄想かな・・・)

(祐君は、男の子から、一歩成長したの?気になるな、やはり)


純子さんは、じっと祐君を見て、一言。

「今朝の祐君って、色っぽい感じ」(・・・やはり察しがいい・・・)(責めている感はない)


祐君は、あっさりと切り返す。

「シャンプーの匂いかな、まだ乾いていない」(おい!そういう意味でない)


私は、前々から思っていたことを口にした。

「一度、祐君をモデルにしたいなあ、どう?」


祐君は、ここでもあっさり。

「いいかな、やったことある、時間が合えば」(そうか、森田哲夫先生の子だ)

「風情は、京都西陣がいいかな、親父の実家」(ほ・・・イラスト描きたい)


三人朝食が終わり、大学に登校。(別方向が悔しい、純子さんがうらやましい)

私、真由美は、祐君と純子さんを見送った後、再びアヤシイ思いが生じた。

「この前は、偶然を装ったハグ」

「この次は、私は、祐君にキスをする、押し倒しても」

「ジュリアと何かがあっても、それを私は上書きする」

「博多女は、直情、そして情が深くて、諦めないよ」

「祐君なら、愛し合いたい、他は嫌」

「後は、どうやってチャンスを作るかだなあ」

逆方向の京王線に乗りながら、私、真由美はしきりに計画を練るのであった。



私、純子は、祐君の変化が、ちょっと辛かった。(大人になった、そんな感じ)

でも、その変化が、ますます「欲しさ」を増した。

祐君を思いっきり抱きたい、メチャクチャにしたい。

私も、祐君に思いっきり抱かれて、メチャクチャにされたい。

「ジュリアとの一夜」は、「何かあったとしても」祐君は言わないだろうし、そもそも確かめようがない。(現場を見ていないのだから)(現場を見ていないのに、責めるのは嫌だ)

そんなことより、私の心も身体も、祐君を欲しい。

それを果たさないと、何も進まない、そう思っている。


京王線に立つ祐君は、時々、眠そう。(けだるい感じ・・・そこがアヤシイけれど)

改札を出たら、シャンとした。

キャンパスに入った時に、祐君のスマホが鳴った。


祐君は、驚いた顔で話をしている。

「あ、はい、祐です」

「え?休み時間に佐々木先生の部屋に?」

「バイトの資料ではなくて?」

「そんな理由で?」

「わかりました、伺います」


電話を終えた祐君は、ひどく苦しそうな顔。


私、純子も心配になった。

「どうしたの?」


祐君は厳しい顔。

「古文の大塚教授って人が、僕のブログを読んで立腹」

「ブログをやめるか、大学をやめるか」

「ブログをやめないと、大学を退学にさせるって、佐々木先生に怒鳴り込んだらしい」

「加えて、佐々木先生の指導が悪いとも、怒鳴って」

「古今の新訳も、危なくなった」


私、純子は、腹が立った。

「許せないなあ・・・そういう人、言論は自由のはず」


ところが、祐君は、私の怒り顔を見て、笑った。

「思いっきり論破したくなった・・・」


・・・やはり、祐君は、底が知れない。

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