第108話母彰子VS姉瞳

祐の姉、瞳は、母彰子に厳しく叱られた。

その発端は、連休中に「祐を無理矢理帰郷させ、身体を鍛えさせる」と、得意げに母に話したことだった。


母彰子

「あのさ、瞳、また祐に無理矢理を言ったの?」


瞳はニンマリ

「当たり前だよ、あのアホ祐は、鍛えてあげないと」

「帰って来い!って命令したよ」

「毎朝、海岸沿いを10キロ走らせる」

「どうせ、あの軟弱アホに付き合う彼女なんてできるわけがないでしょ?」


すると、母彰子の声は不機嫌に低い。(瞳は、この母の低い声が、子供の頃から超苦手、この時点でビビっている)

「どうして、そんな命令をするの?できるの?」

「祐の予定とか都合とか、聞いたの?」

「それを聞いて、そんな命令をしたの?」


瞳は、思わず後ずさり。(もう逃げたい・・・鬼母は、何か祐の都合を掴んでいると思った)

「う・・・聞かないよ、そんなの、あのアホ祐に予定なんてあるわけがないと・・・思った」


母彰子は顔も声も言葉も厳しい。(まるでムチのように、瞳を叩く)

「だから、あなたは無神経女なの」

「体力だけの女」

「祐のことを思う、心配するなんて言いながら、自分のストレス発散のために、祐を虐めて来た」

「何度、貴方の理不尽な虐めに、祐が泣いて苦しんだことか」

「今回も結局は、そうでしょ?」

「県庁なんて難しい所に務めて、ストレスがたまった」

「そのストレスを、祐を無理矢理帰郷させて、鍛えるなんていいながら、文句を言ってストレス解消」

「その弱い物虐めの体育会的発想、おかしいと思わない?」

「どうして、連休に祐を呼んで一緒に過ごすの?」

「瞳の相手をしてくれる県庁の人とか、彼氏はいないの?」


ここまで言われて瞳は、半べそ。

「だって・・・祐に予定なんてない・・・と思ったし」

「顔見たいし」(祐は可愛いなあと思うので、本音が出た)


母彰子は、半べその瞳に言い渡す。

「祐は、すごく難しいアルバイトがあるの」

「私だって尻込みするくらいの、難しい仕事」

「しかも、平井先生のところと、秋山先生の掛け持ちで」


平井先生と秋山先生は、「体育会系女」の瞳でも、よく知っている。

母彰子も父哲夫もお世話になっている、親交の深い大先生である。


「あの祐が、あの大先生の所でアルバイト?」

瞳は、腰が抜けるほど驚いた。


「ねえ、母さん、それ、マジ?」

「祐は大丈夫?」


母彰子は、厳しい顔のまま。

「だから、祐は、帰郷して、あなたのご機嫌を取って、海岸マラソンどころではないの」

「もう、机に向かっていると思うよ」

「すごい重圧を受けているかな」

「見込まれたといえば、そうだけど」


瞳は、ソファにぺたんと座り込んだ。

「私だと、手伝いに行けないよね」

「何の戦力にもならない、その方面は」

「でも、ご飯ぐらいは、作ってあげたい」


母彰子は、少し微妙な笑顔。

「でね、ご飯はともかく、彼女は・・・両隣にいるらしい」

「両方とも、ご縁のあるお方、私とも父さんともご縁のある人の娘さん」

「祐は、どっちにするのかな」

「それも悩むのか」

「仕事が難しくて、悩んでいる暇もないかな」


瞳の目が丸くなった。

「何?両隣に彼女?」

「また、女難?」


そんな話をしていると、玄関ドアが開いた。

父哲夫が帰って来たようだ。

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