第109話連休中、一人?姉の瞳は涙する

私、瞳は、お父さんに泣きつきたい気持ち。(社会人になっても、甘えたい人だ)

いつもカッコよくて、やさしい、お父さん。

お母さんは、祐に甘くて、いつも私に厳しいから、ついお父さんに甘えることが多かった。

だから、今度も、迷いなく、お父さんに甘えた。


「お父さん、祐がね」

と、お母さんとのことも含めて、「かくかくしかじか」を言う。(母は、黙って私の言うことを聞いている)


父哲夫は、いつものやさしい顔。

「わかった、瞳も悪気は無いよね」(私は、肩の力がストンと落ちた、もう、涙ボロボロだ)


私はグジュグジュのまま

「祐、大変だよね」

「何もしてあげられない、変なことを言って、また困らせたかも」

「祐、怒っているかな」


父哲夫は、うれしいことに首を横に振ってくれた。

「いや、気にするな」

「祐は、必死だよ」

「瞳の言ったこと、多少は耳に入ったとは思うよ」

「でも、祐が背負った仕事は、そのレベルでない」

「もう、目の前の仕事で必死なはず」


私は、これしか言えない。

「うん」


父哲夫が、やさしい声。

「見守るだけ、何も言わずに」


「うん」(ここにきて、ようやく気持ちが落ち着いて来た)


母彰子が、父哲夫に聞く。

「博多はいつから?」


父哲夫は、タブレットを開く。

「うーん・・・天気次第かな」

「雨が多いと難しい」

「連休時期で、大丈夫と思うけれど」

「あまり観光客がいない場所を考えている」


母彰子が、やさしい顔に戻った。

「私も行きたくて、義夫さんにもお礼しないと」

「予定が合ったらいいかな」


父哲夫は素直に頷く。

「それは構わない、助かるかな」

「ホテルは、大きな部屋だから問題ない」


母彰子は、途端に笑顔に変わる。

「うん、行くよ」

「期間がのびたら、授業は休講にする、取材目的でいいや」

「はぁ・・・博多か・・・いいなあ・・・」


ただ、父哲夫が、何かを思いついた。

「なあ、奈良町にも行ったほうがいいかな」


母彰子も「ハッ」とした顔。

「そうだ、行かないと!」

「お礼しないとね」

「祐が困る」


父哲夫は苦笑。

「まあ・・・祐もいいのか悪いのか」


母彰子が、父哲夫の隣に座った。

「誰かに似て、モテるのよ」


父哲夫は首を横に振る。

「いや、祐の個性はまた別、縁が縁を呼ぶ」


こんな話を聞いて、私は全くわからない。(何で奈良?縁が縁を呼ぶって何?祐がモテる?はぁ?)

父と母は、仲良く具体的な日程の話を始めているし(私は、そっちのけで!)、自分の部屋にスゴスゴと戻るしかなかった。


せっかくの連休なのに、私は「アホの祐」とも逢えないし、両親は仲良く博多旅行だ。(取材にかこつけて)


「私だけ、この家で一人だけ?」

もう、また泣きたくなって来た。

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