第107話祐君が悩んでいたことが判明

私、菊池真由美としては、祐君の辛そうな顔が、胸にキュンキュンとなっていた、(純子さんは、実際、どうでもよかった、私が何とかしてあげたかった)

だから、電車に乗って千歳烏山を離れれば、また気分が変わると思った。(祐君は、その余裕もなかったようで、歩きを選択したけれど)


祐君は、歩きながら口をキュッと結んでいる。(切羽詰まったような感じ、ため息はつかない、私たちに気を遣い過ぎかな)


純子さんが、可愛らしいケーキ屋を発見した。

「ねえ、祐君、あそこに」


祐君は、顔を少し明るくする。

「のぞいてみよう」


私も、少し安心。

「都内のケーキ屋さんで、も憧れだったの」(と、ようやく自らの気持ちを言う)

純子さんも、「えへへ」の顔。

「和菓子屋の娘だけどね、ケーキも好きなの」


結局、そのケーキ屋さんに入った。

喫茶コーナーもあったので、よかった。


祐君は、フランボワーズ。

私はレアチーズ。

純子さんは、チョコレートケーキ。

でも、祐君の発案で、分け合って食べた。


かなり人気のあるお店らしく、有名人(芸能人)の写真とかサインも壁にあるけれど、見る余裕は、ない。

それよりも、祐君の心にのしかかっている「内容」を知りたかった。(博多女は、直線的なのだ)


「で、祐君、実際、何をやるの?」


祐君の返事もストレートだった。

「まずは、古今集の仮名序の現代語訳」


純子さん

「うん・・・すごい・・・本気でかからんと」

「読んだことある、格調高い名文」


祐君は、ケーキと一緒に頼んだ紅茶を少し飲み、ぽつり。

「あのね、先生と弟子の人、風岡さんって人には言いづらいけれど」

純子さん

「うん」

「言いづらいって?」


祐君は、ゆっくりと話す。

「なんとかなり・・・って言い方を現代語訳する場合」

純子さんは意味不明な顔。

「それを?」

私も意味不明。

「なんとかである・・・とか?」


祐君は首を横に振る。

「・・・ですます調では、まずいのかな、と」

「である、も現代語でないわけでもない、けれど」

純子さん

「であるが、格調高い」

「でもガチガチな固さもあるね」

私は、ハッと思った。

「であるに、訳さなければならない理由もないのかな」


祐君は頷いた。

「であるは、明治期以降の表現かなと思うし」

「今は、それで悩んでいる」


純子さん

「できる限りの、ですます調で訳してみたら?」

「それで、比較してみよう」

「まずは一歩かな」


祐君は、「そうだね」と、うれしそうな顔。(ようやく、輝きが戻った)

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