第92話祐君の部屋で、玉鬘談義(4)
祐は、そろそろ、話をまとめよう、と思ってはいた。
そうでないと、源氏は奥が深い。
あれこれと言い始めたら、何時までかかるか、わかったものではないのだから。
「まずは、石清水八幡」
「次に奈良桜井の長谷寺に」
「ほぼ身寄りがない、あてになる人のいない玉鬘の一行は、神仏に今後の生活の希望と安寧を祈願するしかなかった」
吉村純子と菊池真由美は、話に乗って来たようで、フンフンと頷いている。
ただ、祐は、そのフンフンと頷く顔に、話を端折ることが難しかった。
結局、マニアックな話に陥ってしまう。
「そもそも、女房集めは、何種類か、あります」
吉村純子は。「え?」と焦り顔。
「と言うと?お世話係の求人と就職だよね」
菊池真由美も、似たような顔。
「誰かの伝手で集められるの?」
祐は、一息ついて、説明をする。
「まずは、その人の親が、自分たちとも関係が深い、しっかりとした女房を選んで集めるスタイル・・・一般的ですが」
「玉鬘も、最初はそうだった、しかし、筑紫に行ったり、筑紫から戻る際に、女房は減ってしまった、だから集めなければならないけれど、肝心の親がいない」
吉村純子の目が輝き出した。
「うん、そうだね」
「何となく・・・見えて来たな」
菊池真由美も、深く頷く。
「そう・・・だね・・・」
「集めようにも、集められる人が、いないんだ」
祐は、続けた。
「親以外には、男君が女房を集める場合があります」
「男君が、後見を持たない女性を、自邸に迎える場合、女君の女房を集めます」
「源氏物語では、光源氏が紫の上を二条院に迎える・・・拉致だけど」
「その際に、自ら女房集めの考え方を示して、集めさせています」
「少納言の乳母に対して、それまで紫の上に仕えていた女房の中から、ふさわしい者とか、しっかりとした古参女房を集めろとか」
「まだ幼かった紫の上のために、同じような年頃の女童を集めるとか」
「絶対に紫の上の存在が葵の上や、紫の上の実父の兵部卿宮に知られないようにとの配慮も怠らず」
「光源氏は、すごく細かな神経を使って、紫の上に仕える女房を集めたのです」
吉村純子と菊池真由美は、そこで顔を見合わせた。
吉村純子は首を傾げている。
「それが玉鬘に何の関係が?」
菊池真由美
「うん・・・純子さんと同じ・・・紫の上と玉鬘・・・雰囲気が違う」
祐は、二人の反応に頷いて、話を続けた。
「玉鬘を六条院に迎えるにあたって、玉鬘の女房集めに、光源氏の関与が全くないんです」
「そういうことに、すごく神経を使う光源氏ですが、それが全くなされていない」
吉村純子と菊池真由美は、同時に「あ!」と驚いた顔。
吉村純子
「集まった女房の質?」
菊池真由美
「いい加減な人も・・・それで・・・あの悲劇に?」
祐は、ほっとして、頷いた。
「もう少し、説明が必要ですが」
吉村純子と菊池真由美は、ますます顔が輝いている。
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