第372話母(彰子)の不安と想い

私、森田彰子は、息子祐が秋山先生の講演代読なんて,恐れ多いこと(分を過ぎたこと)と思う。

旧弊の権化の古文学会からすれば、ありえないと、祐はもちろん、秋山先生まで(表立って言わなくても)非難が及ぶことは、目に見えている。

(とにかく、出る杭は叩け、芽は踏んでつぶせが、大好きな連中なのだから)


ただ、奥様の美代子さんから「どうしても」と言われれば、また和歌の大家平井恵子先生の「お言葉」も重い。

出版社の伊藤さん(私も長年の知己)も、「学会への根回しはします」との言葉。

そうなると講演会を私の一存でつぶすことはできない。

(もう清水の舞台から飛び降りるような思いで、祐の講演代読を、受け入れたのである)


ただ、祐と二人きりになりたかった。

(ゆっくり、祐と講演原稿を照らし合わせたかった)

でも・・・周囲に女子が多い。

音楽家のジュリアさんまでいるので、母親と言えども、なかなか割り込めない。(祐は、囲まれているから)

娘瞳も割り込めないらしい。(彼女の強引な性格でも)

「母さん、無理だった」

「周囲の女子圧力が強くて」

「でもさ、まともな人ばかり、心配ない」

なので、祐と二人きりは、諦めた。


で・・・母親として見ていると、確かにいい女ばかり。

純子さんは、おおらかで、ふっくらと、祐を包み込む感じ。(女神様みたい)

真由美さんは、ハキハキと、祐を引っ張る。(かっこいいなあと、女としても)

春奈さんは、賢いタイプ。(冷静に祐をサポート、しっかり者のお姉様タイプかな)

朱里さんは、どしっと落ち着いている。(万能タイプかな、底知れない力もある)


まあ・・・ジュリアさんとは「ない」と思う。

確かに超美人だけど、フランス人、いつかは母国に帰ると思う。

(でも、日本にいる間は、お互いに支え合って欲しい)


結局、祐をサポートしてくれている女子たちへお礼を述べて、一旦静岡に戻ることにした。


「連休明けの講演代読までそっとしておいて欲しい」

最後に言われた平井恵子先生の言葉が重かった。

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