第38話祐君と話が深まる(2)

「奈良町の和菓子屋さんって何軒かありますよね」

祐君は、少し考えている様子。(何軒かって・・・そこまで知っているの?って不思議)


「元興寺さんの近くに」


祐君は、私の顔をじっと見る。(うちは、またドキドキ・・・あかんくらいに)

「元興寺さんの近くにも何軒か、あります」


大きな声では言わなかった。

「そこまで知っているなら」と、実家の店を言うと、祐君は笑って頷いた。

「母さんと寄ったこともありますし、一人で行ったことも」

「美味しいお饅頭です、好きです」


私は、不思議やら驚くやら。

「ご縁なの?」と思うけれど、祐君に聞いてみた。

「普通の観光客は、興福寺と春日大社、東大寺の大仏殿くらい」

「滅多に、奈良町まで歩かんけど、何で知っとるの?」


祐君は、柔らかな顔。

「子供の頃、小学生の頃に、奈良全般を歩くことが多くて」

「母が歴史の先生をしていて、その研究の関係で」

「奈良町のホテルに泊まることが多かった」

「それで奈良町も歩きました」

「もちろん、興福寺の阿修羅も、春日大社も東大寺も、よく見ました」


私は、ようやく、祐君の「奈良理解」の理由を理解した。

少し悔しいのは、私は小学生の頃から京都の私立校通いで、日中は奈良にいない。

(土日も、奈良町にはいなくて、都会の京都や大阪で遊んでいた)

(奈良町にいれば、もしかして、祐君に、もっと早く会えたかもしれないのに)


そう思うと、また祐君にスリスリしたくなった。(気持ちも溶け合っているって感じ)

「時間を見つけて、一緒に奈良町に行こうか?」


祐君は、少し笑う。

「入学式を終えて、学生生活が落ち着いてから」


私も笑ってしまった。

「当たり前だよね、まずは、それ」

(祐君と一緒にいられれば、この東京も天国!そう思った)


ただ、祐君が奈良町に詳しい「もう一つの理由」については、聞き出せていない。

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