第39話恵美は祐の「追いかけられトラウマ」を不安に思う。

祐は、「お風呂に入りたい」と言う理由で、自分の部屋に戻った。

この理由では、純子も止めないはずと、考えてのことだった。


その祐が部屋に入って、ベッドに腰掛けて少し休んでいると、スマホに着信音。

祐がスマホを手に取ると、恵美だった。

「祐ちゃん、どうしたの?昨日何度も電話したのに出ないから、すごく心配したよ」


祐は焦った。

「あ・・・ごめん・・・気がつかなかった」

「寒くて、熱が出て、フラフラして・・・スマホもサイレントモードで」

「アパートに帰って、そのまま寝て、今起きたの」

(とても、純子の部屋で一晩とは言えない)


恵美はまた心配する。

「風邪なの?大丈夫?」


「薬飲んで、少し回復した、心配しないでいい」


恵美

「美咲も心配していた、昨日別れる時、元気がないような感じって」


「うん・・・でも今さら、仕方ない」


恵美

「・・・で、美咲とは、どうだったの?」

「美咲は感激していたけれど」


祐は答えに困った。

「うーん・・・いきなり神保町に来るって言うから」

「一緒に歩いた・・・それだけかな」

「悪い女の子ではないと思う」


恵美は、祐の気持ちを察した。

「そうだよね、一昨日あったばかりで、押し掛けて来てもね」

「美咲も、あせり過ぎかな」


祐は本音。

「できれば、一人で歩きたかった」

恵美も祐の本音がわかった。

「美咲とデートを、またしたい気はあるの?」


祐は、少し間を置いた。

「僕からは、無い」

恵美は返事が難しい。

「・・・そう・・・」


祐は穏便な答えに戻す。

「まだ入学式前、学生生活、都内での生活が落ち着かないと」

恵美

「わかった、美咲にはそれとなく言うよ」


「ありがとう、助かる」

恵美

「でもさ、私ならいいよね、アパートに行っても」

「ああ・・・いいよ、連絡してくれれば」


電話を終えた恵美は、思った。

「祐ちゃんは、追いかけられることが、やはりまだトラウマ」

「だから、昨日も体調を崩した」


祐の去年のことを思い出す。

「追いかけられて気持ちも体調も崩して、去年の夏休みには、その女の子から遠く離れて、奈良で逃げるように一人で避難生活」

「そうでもしないと毎日見張られて、つけられて」

「その二の舞だけはさせられない」


恵美は、美咲にメッセージ。

「やはり風邪、長引くから、当分面会禁止」

「治ったら、私から連絡する」


美咲からは、「いや!逢いたい、心配!」のメッセージが戻って来ている。

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