第37話祐君と話が深まる(1)

「ありがとうございました」


祐君の甘い声が耳元に。

私は、ドキドキして(うれしい!)声が出せない。


でも、祐君は、実にあっさりと、ハグを解いた。(もっと!って言いたかったけれど)


「うふ(私は照れた)、ありがとう」

「今から作るね、そこに座って」

私はキッチンに立った。(初めて祐君に出す手料理、気合が入った)


「玉子粥」なので、すぐに出来て、祐君の前に。

祐君「ありがとうございます」と、ちょこんと頭を下げて、食べ始めた。


「美味しいです」(お世辞?と不安)


でも、祐君の食が進むので、それで安心。

私は、昨晩の事を話題にせずに、地元奈良の話をすることにした。(その方が、祐君も気をつかわないと思った)


「ところで祐君、万葉集とか奈良は好きなの?」


「はい、両親に連れられて、子供の頃から、何度も」


「へえ・・・どのあたり?」(すごく気になる!)


「奈良公園一帯から、奈良町、元興寺さん、御霊神社」(この言い方は、単なる観光客を越えている)

「西の京(この言い方も、奈良に詳しい)、の薬師寺さん、唐招提寺さん」

「菅原寺、西大寺・・・平常宮の海流王寺、法華寺」(一般人では平城京だけど)

「明日香村も、石舞台、甘樫丘、飛鳥寺、橘寺、川原寺」(マジ?コアな寺もある)

「桜井の長谷寺・・・それから大神神社」(私も行きたいお寺と神社だ)

そこまで言って、祐君恥ずかしそうな顔。

「全部は言いきれないです」


「すごい・・・祐君は奈良通?」

「そこまで歩いている人は少ないかも」(まるで歴史学者くらいだ、と思う)

でも、私には、もう一つ確認することがあった。

「もしかすると、私の実家の和菓子屋を知っているかもしれない」

そう思うと、またドキドキして来た。


「それで、祐君、うちの実家(なぜか、突然、関西詞に代わってしまった!)が・・・奈良町にあるんやけど」

(うちはドキドキ、祐君は目を丸くしている)


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