第8話純子は祐の部屋に(2)祐の趣味に好感を持つ

さて、私を驚かせた祐君の本は

「万葉集」「万葉集を知る辞典」「平城京の歴史」「飛鳥写真集」等、私の実家がある奈良の本。

また「源氏物語」「枕草子」「古今和歌集」「方丈記」「新古今和歌集」「式子内親王の和歌」等の古典。

「ローマ人の物語」「フィレンツェ史」「ベネツィア写真集」「フランス王朝史」

・・・等の超マニアックなものが100冊以上!


だから、つい対聞いてみた。

「ねえ、祐君って歴史好きなの?」


祐君は素直に頷く。

「はい、いろいろと・・・手当たり次第に・・・でしょうか」


私は、祐君の答えが実にうれしかった。

「私もそうなの、図書館に通うのが好きで」

「祐君が持っている本も読んだ記憶があるよ」


祐君は、うれしそうな顔に変わる(その可愛いこと!)

「偶然でしょうか、それとも・・・何かのご縁でしょうか?」


そこで私はまた聞いてみた。

「ところで、祐君は今読んでいるのは何?」


すると祐君は、今まで見たことのないような苦し気な顔。

「あの・・・電子書籍で・・・」

「ドストエフスキーのカラマーゾフの兄弟を」

「とにかく、読みこなせなくて、ページが進まなくて」

「ようやく8割ぐらい」


この答えに、私は、また驚いた。

「8割?・・・私なんて、100ページも進まなかった」

「それから放置・・・なのに」


さて、祐君は驚いてばかりの私に背を向けて、本を書棚に並べだす。

その手際も、なかなか器用に見えるけれど、この私も「見てるだけ~」ではいられない。

「ここでいい?」などと言いながら、祐君を手伝う。

祐君は、そのたびに「ありがとうございます」と、可愛い顔。

そんな至福の時間を過ごしたのである。


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