第5話純子と祐の初デート(4)

その上祐君は、「はい、どうぞ」なんて私をエスコートしてお洒落なフレンチの店内に入れてくれるし・・・マジで・・・うん・・・ほわほわ。


でも、ちょっと気になったのは、メニューを持って来たウェイトレスのお姉さんが「うっ!」と思うくらいに美少女で、祐君に「やさし気な顔」を見せたこと。

「さっさとメニューを置いて帰りなさいよ!」と思うけれど、祐君は可愛い顔と声で「ありがとうございます」なんて・・・受け取っているし・・・


しかし、私も負けてはいられない。

祐君がメニューを見始めた瞬間に、「今日は祐君の引っ越し祝い、だから任せてね」と見栄を張る。(祐君を餌付けの狙い・・・それもあるかも)


その祐君は、うれしそうな顔。

「はい、ありがとうございます、では今回は純子さんにお願いしますね」

「でも、次は僕が責任を持ちます」


・・・なんてきっぱり言うものだから・・・またヤバい。


「次のデートもあり?こんな可愛い子と?」と思うけれど、恥ずかしいから口には出さない。


さて、決まったメニュー(これも祐君が選んでくれたんだけれど)は、和牛のステーキをメインにしたもの。

前菜、コンソメスープ、和牛ステーキにチョコレートのケーキ、珈琲か紅茶がつくスタンダードなもので、前菜はすぐにテーブルの上に置かれた。


すると祐君は私の顔を見てふんわり笑顔。

手を合わせて、「いただきましょう」なんて言ってくれるものだから・・・

私は「あ・・・うん・・・はい」なんて、つい噛んでしまった(これも恥ずかしい)


そして食べ始めながら感じたのは、祐君の食べ方が、本当にきれいなこと。

フォークとナイフの使い方、スープの飲み方まで、ついつい見とれてしまった。


だから聞いてみた。

「ねえ、祐君、フレンチは慣れているの?」


祐君は、照れた顔。

「はい、そういうのに厳しい家で、仕込まれました」


「どんなお屋敷に育ったのかなあ」と思うけれど、それはまだ聞けない。


私も、下手は下手なりに食べること優先。

(祐君に見とれて、こぼしたりすると恥ずかしいと思ったし)


完食して、祐君は紅茶を頼んだので、私も紅茶。

祐君

「美味しかった」

「うん」(陳腐!)

と思ったので、また質問を企てる。

「大学一年生になるの?」(これなら祐君も答えやすいと思った)


祐君は、頷いて答えてくれた。

「はい、お茶の水に本校がある大学ですが、二年生までは世田谷校舎・・・明大前の」


この言葉の最初からだった。

私の顔は、どうしようもないほど真っ赤、心臓はバクバク状態。


だから、言葉がまた嚙んでしまった。

「え・・・あ・・・マジ?」

「同じ大学!同じ一年生?(当たり前だけれど)・・・で・・・学部は?」


祐君は驚いた顔で応えてくれた。

「はい、文学部に」


次の瞬間、私の手は抑えが効かなかった。

「私も同じ大学!同じ文学部!」と言いながら祐君の手をしっかりと握っている。

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