第251話春奈は、祐を思う。
サントリーホールを出て、私、風岡春奈と、祐君たちはメトロで帰った。
純子が「風邪を引かせても面倒」と、女子全員の見解を言った。
祐君は、「あ・・・そうだね」と、いつもの一歩遅れの反応。(それも可愛い)
笹塚で田中朱里が降り、千歳烏山で祐君、純子、真由美が降りた。(私は調布なので寂しい・・・でも仕方ない)
驚いたのは、音楽家たちからの祐君の人気。
平井先生も「古文だけではない」と言っていたのを、完全立証の形。
でも、ホッとしたのは、祐君が「当面は古文中心」と言ってくれたこと。
(古今集、源氏、万葉とあるから、仕方ないよね・・・)
(それだけ、祐君と一緒の期間がある・・・何とかせねば・・・うん、ムギュして、ブチュしたい)
少し心配したのは、祐君の唇が、荒れていたこと。
(おそらく疲れか、栄養の偏り)(だから、純子と真由美にも、しっかり面倒見てね、と言い渡した)
祐君は、周囲に仕事を振りながらも、結局は自分で徹底的に点検をしたいタイプ。
それもあって、おそらく深夜まで作業をするのかな・・・
(あるいは、私たちの仕事が中途半端か、祐君の求めるレベルにはないのだと思う)
だから、あのアパートか、近くに空き部屋が出れば、千歳烏山に住みたい。
(純子と真由美では、イマイチ不安、自分が面倒を見たい)
(同じ部屋でも?うん・・・世話女房タイプだから問題なし)
(怖い?そんなことない、やさしく抱っこしてあげる)
お風呂に入って、あちこちマッサージと点検確認。
純子や朱里ほどではないけれど・・・
私だって・・・うん・・・自信ある。
真由美は、上半身は十人並み・・・でも下半身はメッチャ綺麗。
「うーん・・・祐君は、胸派か、脚派か?」
そんな、しょうもないことを考えるが、「哲夫先生の助手で、美女も美少女も、見慣れている」も聞いたことがある。
まあ、女の「外見でコロリ」タイプでないことは、よくわかる。
だから、メチャ美少女の田中朱里にも、最初は塩対応。
・・・で・・・祐君と平井先生の会話を思い出した。(なぜかは、不明)
「古今とか・・・源氏を読んでいて・・・」
「通い婚の実感がない、ということ」
「そもそも、やったことがない」
「源氏は、覗き見をする」
「お化粧までして・・・」
これには平井先生も、うなった。
「そうよね、贈り物を持ってとか」
「それで貧乏な末摘花も生き延びて」
「宇治の姫たちも、プライドは高いけれど、貧乏で」
「薫と匂宮からの届け物がなければ、食べるにも苦労した」
祐君
「通り一遍の、訳は何とかできるかもしれない」
「でも、実感がない」
「やはり、最初は、女が男を選ぶ」
「だから男は、求愛の歌に加えて、その思いや歌に合わせた布とか他の贈り物」
「そうなると、やはり歌のセンス、教養に加えて、財力も大事かな・・・とか」
私も、それには返事が出来ない。
まず、女だから、男の感覚が、わからない。
(祐君が通って来るとなったら、即OKだなあ・・・恋の駆け引きも何も無し)
平井先生は苦笑。
「祐君は、モテ男だからね、求められちゃう」
「だから、捨てられた女の気持ちも難しいかな」
祐君は、考え込んだ。
「モテるとか、実感がないです」
「目の前のことに、必死」
「不安だらけで、恋愛とか、まだまだです」
「しっかり先が見えていない状況かな。それが苦しい」
その悩む顔も、美しかった・・・少し痩せたかな・・・悩み多き、才能あふれる祐君だ。
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