第33話祐の目覚め

祐の耳に、可愛らしい小鳥の声が聞こえて来た。

しかし、眠気が強すぎて、目を開けない。

「もう少し寝たい」そう思って腕を何気なく動かす。


驚いた。


「え?どうして?」


目も開いてしまった。


「・・・純子・・・さん?」


純子の腕が自分の身体に「しっかり」巻き付いている。

と言うより、身体も密着している。


「どうして?」

祐は懸命に寝ぼけ頭で考える。

「確か・・・昨日頭痛が酷くて、お茶の水の薬局で薬を飲んで」

「少しは効いたけれど・・・千歳烏山の駅から寒くて、また酷くなって眩暈もして」

「アパートにようやく着いたら純子さんが手を振っていて」


「うん?・・・」

その純子が小さな声を出した。


「はい」

祐は声が震えた。

何をどう、話していいのか、全くわからない。


「祐君、動かないで」

その純子からは信じられないような言葉。


「どうしたらいいの?」

祐は、身体を動かせなくなった。(ただ、罪悪感は不思議に感じていない)


しかし、それはそれで、暖かかった。

祐自身、「純子さんならいいかな」「安心する」と思った。(どうしてそう思ったのかは、祐自身わからなかった)

そのまま、ウトウトして、眠ってしまった。



祐が再び目覚めたのは、まぶたに柔らかい感覚があったから。

「純子さんの・・・唇?」(少し湿り気と、吐息を感じた)


他にも、まぶたに、別のふっくらとした柔らかいものが当たる感覚がした。


純子の声が聞こえて来た。(少し笑うような感じだった)

「祐君・・・起きられる?」


祐は、ゆっくりと目を開けた。

その目の前には、純子のやさしい笑顔。


「もう一回、いい?」


祐が返事をする前に、祐の顔は純子の豊かな胸に包まれている。


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