第295話祐の周りでは間接キスは死語になったらしい

祐としては、もう少しゆっくりとした学生生活を送っていけると思っていた。

顏を合わせれば、怒って来る母や、姉がいないのだから、ようやく安眠できると期待もしていた。

しかし、秋山先生と逢ってから、平井先生、佐々木先生、吉村先生からの「仕事」が舞い込んで来た。(その対応に忙しくて、実は夜は眠れていない)(隣の純子や真由美には、極力わからないようにしているけれど)

ジュリアとの再会は、うれしかった。

彼女は、「少し年上」、もあるので、安心感がある。(胸に包まれるのは、苦しい・・・最初は驚いた、舞い上がりそうになった)(でも最近は、香水の強さが気になる)(それがフランス人と日本人の感覚の違いなのかもしれない)


今、一番欲しいのは、一人で、ゆっくりとした時間。

しかし、純子さんにも、真由美さんにも、お世話になっている。

田中朱里さんも、中村雅代先生の遠縁とも聞いたから、無碍にはできない。

風岡春奈さんは、怖いけれど、平井先生の弟子だから、変な対応も無理。

(彼女は、いつも怒っている顏なので、自分からは声をかけられない)


さて、そんな雑念はともかくとして、田中朱里が声を掛けて来た。

「お昼は、どうします?」

純子

「いつものライブバー?」

祐は、あまり考えていなかったので、結局ライブバーになった。


入って行くと、杉田香織がいた。

「一緒しましょう」と言って来たので、4人で座った。


頼んだのは、祐がカレー、純子はオムライス、朱里がナポリタン。

杉田香織は、ピザだった。


祐は、うれしそうな顔。

「ここのカレー好きです、濃い感じ」

純子が、含み笑い。

「そういうことを言うから・・・」

朱里は察した。(そのまま取り皿を4枚頼んでいる)

杉田香織が、慌てた。

「間接キスに・・・」

純子は、ケラケラと笑った。

「そういうのないです、カレーとハンバーグとナポリタンで」

「美味しいものは、分け合って食べるだけ」

朱里は、何も言わずに祐のカレーを取り皿に分けている。

祐も、器用にハンバーグやナポリタンを取っている。

杉田香織は、あまりの「自然さ」に笑ってしまった。

「ねえ、私も入れて」

祐は、笑顔。

「はい、光栄です」

純子

「学生の時だから、できると思うんです」

朱里

「とても親の前ではできません」

杉田香織は、楽しくなってしまった。

「なんか、世界が広がったなあ」

「確かに、間接キスもないよ、これで」


マスターは、そんな4人の様子を見て、うれしそうな顔。

「うまく落ち着いたな」

「結局、全部食べたいだけかな」

「いっそのこと、ビュッフェスタイルにしようかな、その方が楽だ」


マスターの考えはともかく、4人の大学生は、かなり盛り上がっている感じである。

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