第161話恵美の気持ち

私、恵美が祐ちゃんの伊東行きを聞いたのは、昨日の夜だった。

祐ちゃんのお父さん、哲夫叔父さん(子供の頃からの超憧れ!だって、メチャ美形で紳士、見飽きない)が、都内で会議、その後に、私の家(割烹料理、食事も兼ねて)に寄った。


私もさっと同席。(こういう時は、抜け目がないのだ)(母美智代もいいよ、と)


哲夫叔父さん

「祐のことを心配してくれてありがとうね」(・・・また、見とれるくらいに美形)


「祐ちゃんが東京にいるって思っただけで、うれしい」

「最近は、いろんなお仕事で忙しいみたい」(邪魔できないなあって・・・彼女候補も二人だし)


哲夫おじさんは、にっこり。(はぁ・・・いいお顔・・・惚れそう・・・彰子叔母さんが憎い)

「その祐は、明日から伊東の別荘だって、芳江さんにも連絡した」


私は目を丸くした。

「あの・・・お隣の女性たちも?」(少々不安だ・・・理由は不明)


哲夫叔父さん

「うん、気分転換とか、お世話になったとかも」(これは、祐ちゃんの転倒事故かな、アルバイトも一緒だしね)

「祐も字ばかり書いているから、たまにはいいかなと」(そう・・・祐ちゃんは、根を詰め過ぎる)


私は、母美智代の顔をチラ見、頷いたので、「お願い」モードになる。

「あの・・・叔父さん」

「私も・・・いいかな」


哲夫叔父さんは、鷹揚だ。

「ああ・・・いいよ」

「若い人にまかせる」

「スタジオもピアノも自由に」(お・・・祐ちゃんの歌とピアノも好き)


その後、別荘の隣に住む芳江叔母さんに連絡した。

「あのね、祐ちゃんが彼女候補を二人連れて、明日から別荘に行くよね」

「私も心配だから行くよ」(もう、直接的過ぎ?)(でも私に言葉は選べない、そんなテクニックは無し!)


芳江叔母さんは、ケラケラと笑う。

「確かに心配ね、祐ちゃんの彼女候補ねえ・・・祐ちゃんは、彼女候補とは言わなかったよ、お世話になっている人とか」

「子供の頃は、恵美ちゃんがお嫁さんだったのにね・・・フラれたの?」(うん・・・フラれた・・・従妹でなかったら、とっくに迫っている)


「とにかく、よろしくお願いします」


芳江叔母さんは、うれしそうな声。

「はぁーい・・・海鮮料理、準備しておきます」(・・・ありがたい・・・)


で・・・祐ちゃんにも、昨日の夜、確かにメッセージを送った。(純子さんと真由美さんにも送った、両方とも律儀に即返信あり、よろしくねと)

「私も行きます、よろしくね!」(ハートとキスの大量スタンプ付き)

祐ちゃんの「既読」もついた。


しかし・・・この出発の朝の祐ちゃんの寝ぼけ状態、何?

私のメッセージも忘れ、朝は7時になっても寝ている。(しかも、いい加減な受け答え、二度寝もしようとするし)

「この責任感の無さは何?」

「誰が言い出したこと?」(マジに、両頬をつねりたくなった、泣かせたかった!)


祐ちゃんの部屋に入った時点で、私は心に決めた。

「今回の伊東行きのツアーコンダクターは私」


・・・で・・・今の祐ちゃん?

おにぎりをモタモタと食べて、珈琲飲んでいる。


目の下に、クマができている。

おそらく原稿チェックでもしたのかな。(呆れるほど丁寧に、と思う)

伊東には、持って行かせないことにする。(文字の世界は、鍵をかけてしまう)

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