第130話井の頭公園で祐君の今までの食事事情など

井の頭公園の桜は、声が出ないくらいに満開だった。

私、純子は、身体全体の力が抜けた。

今まで生きてきたストレスが、一度に消え去ったような「生きていてよかった」感が高まった。(ここに来たいと言ってくれた祐君には感謝しきれない)

明太子女も感激したらしく、スマホで写真を撮りまくっている。(私も、もちろん、撮ったけれど)


でも、祐君は、写真を撮る気配が全くない。

だから、「撮らないの?」と聞いてみた。


祐君は、美しい答えだった。(歴史に残るかな、嫌みはなかった)

「心に焼き付けるので」


その後は、あちこちで三人で写真を撮った。(集合もペアも)(ペアはきっちり枚数を合わせた)(祐君の写真は、さすがに上手だった、構図がぶれていない)


磯部焼きとか、きなこ餅、たこ焼きではなくて、お団子を三人で食べた。


祐君

「満開も好き、桜吹雪も好き、新芽も好き」

明太子女

「その時に来ましょう」

「お弁当を持って?」

明太子女

「おかずは何がいいの?」

「祐君は、グルメっぽいな」


祐君は、顔を赤らめた。

「すごく普通のものが好きで、凝ったものは、あまり食べなかった」

明太子女

「というと?」

祐君

「親父は撮影旅行で、あまり家にいなかった」

「母さんも学会とか、大学の講義でいないことも、たびたび」

「いない時は、姉貴とか、僕が作ったから」

「お姉さんは、どんな料理を?」

祐君は苦笑。

「せっかちで大雑把な人なので、すぐにできる焼き肉、野菜炒め、焼きそば」

「僕は、サラダかなあ、それと煮込み、母さんに教わった」

「姉貴よりは、香辛料を使う」

明太子女

「お姉さんとお話ししてみたい」

「病院で、なんとなく声が聞こえた人でしょ?」


祐君は、思いっきり首を横に振った。

「ダメです、彼女は」

「元気だけが取り柄」

「それ以外の、表現はできない」


(祐君は、必死な顔になっていた)


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