第129話三人で井の頭公園に

私、真由美と、祐君、純子さんは、下北沢から井の頭線に乗った。

明大前で京王線に乗り換えて、千歳烏山のアパートに帰る(これも、まだ東京に出てきたばかりの私には、慣れない)・・・「予定」だった。


祐君が、電車に乗り込むなり、突然、予想外のことを言い出した。

「お二人は、そのまま、ご自由に」

「僕は、行きたいところがあって」


純子さんが、祐君の袖をつかむ。(これも自然・・先を越されていて、焦る)


「私たちには、言えない場所なの?」(純子さん、強い!)(祐君の目が泳いだ)


祐君

「いや・・・そうではないです」

「でも、お二人には、無理矢理に平井先生の家に行ってもらって」

「これ以上は、申し訳ないかと」


「そんなことはないよ、誰かに会うの?」(また、直球質問をしてしまう私だ)


祐君は、恥ずかしげに、返事。

「今思いついたんです、誰にも会いません」

「井の頭公園に行こうかなと」

「桜がきれいなので、愛でたいなと」


純子さんは、祐君に身体を寄せた。(しっかり当たってる・・・意図的?)(でも、私も当てたい・・・量では負けても)


純子さんは、また、強い。

「私も行く、真由美さんも行くって」(助かった、さすが純子さんだ)


私も負けない、と思った。

「あんな面白いアルバイト先に誘ってもらったの」

「お礼したいの」(純子さんは、ニコッと私に微笑んだ)(純子さんは、なかなかいい人だ)


乗り換え予定の「明大前」は、過ぎてしまった。


祐君は、笑顔に戻った。(うん、その顔が見たかった)

「あの・・・桜には似合わないけど」


純子さん

「うん、なあに?」

「桜に似合わないものって何?」


祐君

「小腹が減って・・・磯辺焼きが食べたいなと」(これには、純子さんも私もプッと吹いた)


純子さん

「きなこ餅あるかな」

「たこ焼きも」


そんなことで、三人で、井の頭公園に行くことになったのである。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る