第357話伊東合宿②祐の別荘説明など

熱海までの新幹線車内で、祐を春奈に「独占されてしまった」女子たちは、それぞれに反省している。

純子は下を向く。

「ついつい・・・別荘で遊ぶことだけを考えて、祐君の人麻呂訳をないがしろにしてしまった・・・わかりやすい訳で、文句が言えなかった、それもあるけれどなあ・・・」


真由美はチラチラと二人の様子を見る。

「うーん・・・春奈さんだけが、古文の話で祐君に対応できる・・・悔しいけれど、勉強不足で私では無理・・・それにしても、春奈さんの密着はアウト、抜け駆け禁止条約に抵触するよ・・・でも、祐君も話に乗っているし」


朱里はじっと二人の様子を見る。

「祐君は、話を合わせているだけだよ、問題は春奈さんの押し付けた胸肉」

「純子さんには負けるけれど、春奈さんには勝てる、若いだけ私が勝つ」


三者三様で、よくわからない反応もあるけれど、そのまま熱海に到着。

改札口で、祐の遠縁の芳江叔母が満面の笑顔で待っていた。

「ようこそ!祐ちゃん、そしてみんな!」

「さあ、あのタクシーに乗って!」(と、そのまま祐の腕をゲット、歩き出す)


タクシーに乗っても、芳江は祐を独占。

「ねえ・・・心配したよ、酷い目に遭ったね」(健治の暴行事件のこと)

祐は、神妙。

「生き返りました、でも記憶があいまいでね、みんなに心配と迷惑をかけて」

「今回はお礼も兼ねています」(途端に女子たちに笑顔が戻る)


芳江は話題を変えた。

「あのさ、明日の午後からジュリアが来たいとか、聞いている?」

祐は「あ」と小声、スマホを見る。

「メッセージ入っていた」(女子たちは、呆れ顔になっている)

芳江は、祐の頭をコツン。

「命の恩人でしょ?しっかりしなさい」

祐はアセアセで、返信を打つ。(お待ちしています、楽しみです、の定番なもの)


そんな珍問答の中、ジャンボタクシーは森田家の伊東別荘に着いた。

女子たちの中でも、春奈と朱里は、初めてのため、祐が別荘の中を案内する。

「これが女子の寝る部屋。20畳あるから、狭くはないと思う」

「部屋の中にも、お風呂とトイレがある」

「壁に沿って机、電源も豊富、スマホの充電とかパソコンも使える、プリンターは中央に」

「ベッドは10人サイズ、仕切りもできるよ」

「アイドルグループの撮影もあったから、大きなベッド」


女子たちの反応もまた、それぞれ。

純子

「二度目だけど、落ち着くよね、真由美さん」

真由美

「ベッドのスプリングが良くて、腰が疲れない」

「窓からの眺めもいいなあ」

春奈

「マジにすごいなあ・・・上質って感じ、撮影で芸能人も来たんだね」

朱里

「さすが森田哲夫先生だなあ、レベルが違う」


尚、祐の部屋は隣になるけれど説明しない。(添い寝、抱き人形を警戒している)


その後は、露天風呂の説明。

「このボタンでジャグジーにできる、お湯の色は、このボタン」

「これで、撮影もしたのかな」

真由美が反応した。

「あ・・・そういうグラビア見たことあるよ」

「フランスの女の子、すごく可愛かった」

春奈は、祐の顏を見た。

「祐君、もしかして立ち会った?」

祐は首を横に振る。

「それはない、予定にはあったけれど」

春奈が、祐にピタリと寄り添った。

「その予定とか、意味不明」

祐は焦った。(春奈の顏が怖い)

「いや、寝坊して、その上、姉貴と喧嘩して撮影に遅れた」

「で、親父にも叱られた」


純子は、真由美と相談している。

真由美の顏が赤らんだので、よからぬ話のようだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る