第316話学生オーケストラで悩む杉田香織に、祐の子供時代の写真

私、杉田香織は、祐君を高飛車にオーケストラ部に誘って、撃沈どころかオーケストラ部をつぶしてしまった、要するに問題女です。

(泣きたいほど、情けない)

(仲直りは、祐君から、天使の笑みでした)

(・・・顏がメチャ可愛い子だから・・・って・・・それは別)

(・・・後でゆっくりと・・・もう白状したようなものかも)


その後、祐君の「本物の音楽」を聴いてから(聴き惚れてから)は、学生選抜オーケストラでの練習が、全く面白くない、苦痛になってしまいました。


周囲の奏者は、確かに技術、演奏力は、高いと感じます。

でも、ほとんど全ての人が「俺様志向」で、他人との合わせを、あまり考えていない。

それでいて、少しでもミスをすると、陰口の嵐。

(自分がミスをしても、決して認めない)

(性格が弱そうな子を指差して、大声で怒鳴る、そんなブラバン経験者もいます)

要するに、実態は、自己承認欲求過大者と、弱い人苛め大好き人間の集まりです。


そして、そんなオーケストラに選ばれたこと(選抜の理由は、親が地方議会の議長だったからですが・・・そんな人も多いので、あまり気にしていなかったのですが)が、最近は心に酷い苦痛なんです。

(わがまま・・・もともと、わがままですが、もうやめたい)


今回の指揮者も、嫌いです。

曲はベートーヴェンの田園ですが、弾いていて何も面白くない。

音楽そのものが、軽い(ジャンの指揮を見ると、もう、嫌)ので、田園の深い喜びが、出て来ない。

注意も、可愛い女の子には、甘い。

どうでもいい男の子のミスには、血相変えて、怒る。

指揮をしながら女の子をなめるように見ます。(オケの指揮と称して、実は女子奏者のナンパ目的が明確)(練習後にお持ち帰りの噂も、多い・・その女の子はミスしても、怒られないから、呆れます)


でも・・・このオーケストラをやめたら、演奏する場所がありません。(自業自得ですが)

祐君とデュオも・・・できるかなあ・・・足を引っ張るだけかも。

迷いました・・・選抜オーケストラに残ったら、精神が破壊されそうでしたし。

迷って迷って、ウジウジして・・・それが続いて(一週間ほど)。

私は、ブルブル、ガクガクとなりながら、祐君にメッセージを送りました。

「祐君、いろいろごめん、お願いがあるの」

「電話していいかな?」


祐君は、「はい」と返事。

すぐに追伸が来た。

「今、美容院にいて、周りがやかましいので、少し時間が経ったら、僕から連絡します」


「美容院にいて、周囲がやかましい」とは「どういうこと?」と思ったけれど、「祐君からの電話」なんて、メチャうれしいから「うん、待っています」。

(ついでに、ハートとハグとキスの嵐のスタンプ付き)で返信「差し上げ」ました。


その、少し後だった。

豊胸美人の純子さんからメッセージが来た。(最近は、仲良しなんです)

「この写真のポニーテールの女の子、わかります?」


写真もついて来ました。


驚きましたた。

大声を出してしまいました。

「うそーーー!可愛い!子役時代の愛奈ちゃん?いや・・・違う」

「えーーー?愛奈ちゃんより、目が大きいし、可愛い、お人形さんみたい」

「うわーーー待ち受け確定だよ、何か・・・ムギュ―したいよ」


で・・・気がついたのです。

「祐君と目が同じ」

「もしかして・・・祐君のポニーテール?」


真由美さんからは、電話が来ました。

「気がつきました?」


「えへへ・・・うん・・・すっごく可愛いよね」


真由美さん

「本人は、横向いてムクレています、それも可愛い」

「みんな待ち受けにするそうです」

「ポニーテール以外にも、いろいろあって」

「でも、本人がムクレているので、内緒で送ります」


そんなことで、落ち込み気味の私の心は、青空満開になりました。

(でも、祐君からの電話には、知らぬ存ぜぬを通します)

(待ち受けには・・・もう、ポニーテールの祐ちゃんがいます)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る