第62話菊池真由美も、祐に落ちた。

私、菊池真由美は、祐君を見てから(引っ越しの挨拶をしてから)、胸のドキドキがおさまらない。


「菊池真由美と申します」

「博多から来ました」

「4月から、大学の一年生です」

「東京には不慣れですので、よろしくお願いします」」

の定番の自己紹介をしながら、祐君を見た(いや・・・すぐに見つめてしまった!)


祐君は、色白、目が丸くて可愛くて美形で(やばい・・・ヨダレが出そう)

「森田祐です」

「静岡からです」

「僕も4月から大学生です」

と、少したどたどしい話し方(それも・・・そそる)


・・・っと・・・引っ越しの挨拶は、そこで終わるものなんだけど・・・

私は終われなかった。(祐君をもっと見たかった)


「九州には来られたことが?」(来てはいないと思ったけれど、話の種にと・・・)


祐君は、恥ずかしそうな、たどたどしい話し方。

「えーっと・・・中学生のころ・・・母のお供で・・・」

「大宰府の親戚のところに」(え?マジ?私も大宰府に親戚って、母さんが大宰府出身!)

「大宰府の政庁跡から観世音寺、天満宮」(えー――?大宰府政庁跡は母さんの実家から歩いて5分!)

「その後、博多へ・・住吉さん、櫛田神社、筥崎八幡宮・・・」(もう、この時点で、心臓が痛いほど・・・私の生活空間だもの)


私は、あまりにもドキドキしたので、話題を変えた。

「祐君は、静岡で富士山には・・・のぼられたことが?」(同い年なのに、噛んでしまった)


祐君は、また恥ずかしそうな顔(それが女殺しなんだって!)

「僕は・・・のぼってないんです・・・きつそうなので」

「・・・地元の人は、案外のぼりません、言い訳ですが」(ふふ・・・弱みを見っけ!)


結局、私は話を戻した。

「私の母も、大宰府出身」

「何か、ご縁がありそうですね」(もう、うれしくてたまらない)


「はい、これからも、よろしく」(この、あっさり感が、後を引く)(九州女、特に博多の女は、それに弱い)


祐君に挨拶した後、純子さんに挨拶した。

何も感じなかった。

というより、祐君のことで、心が熱くて、どうにもならないって!


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