第63話祐は、九州旅行を思い出す

祐は、菊池真由美との顔合わせの後、九州を歩いた時のことを思い出す。

「大宰府の義夫叔父さんの家に泊まって」

「一週間も泊った」

「母さんは、研究やら、出張講義であまり一緒にいなかった」

「結局、一人で大宰府とか、博多を歩いた」


「大宰府政庁跡は、今は公園みたいな感じ」

「小さな記念館みたいなのはあったけれど」

「でも、古代では遠の朝廷と言われた場所」

「それなりの官僚やら商人が歩いて、いろんな思いも残っている場所だ」

「都から来た人、左遷もあったのかな」

「でも、任期を終えて、官位もあがって都に帰る人もいたのかな」


菅原道真を思った。

「平安時代の人だけど」

「彼も、当時の、あの政庁には行ったのかな」

「道真さんの、出身は、奈良」

「菅原の地で生まれた」

「今、話題の西大寺も近い」

「菅原神社もあって、菅原寺もある」

「菅原寺は、喜光寺と言われて、東大寺大仏殿のモデル、と言うか、ミニチュア版」

「行基さんと聖武天皇の伝説も残る」


純子と真由美の顔が浮かんだ。

「この話をしたら、どんな顔をするのかな」

ただ、思うだけで、話はしないことにした。

「こんなマニアックな話をしても、二人、白けるだけだ」


祐の顔が沈んだ。

「こういう話が、自然にできる人と、一緒にいたい」

「・・・なかなかいない・・・」

「みんなゲームとか、流行歌とかアニメの話ばかり」


大学入学後のサークルも考えた。

「特にやりたいこともない」

「高校時代は読書クラブの幽霊部員で」

「文化祭だけ手伝って」


ただ、入学してみないとわからない話と思った。


「近くの図書館でも探すかな」

そんな思い付きをして、PCで情報を見ていると、スマホが鳴った。

母、彰子からだ。

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