第383話講演代読当日②ゲネプロ(本番前の最後の練習)開始。

午後3時から、講演ホールでゲネプロ。(本番前の最後の練習)

私、春奈と女子たちは、客席で聴くことにした。

(緊張させない程度にアドバイスが出来たらいいなあと思って)


祐君は、紺のスーツに白いシャツ、ネクタイも紺一色のシンプルなもの。

でも、それが、かなりお洒落に見えるのは、祐君ならではのビジュアルかな。

客席には、私たちの他に、出版社の人たちが数人。

(この前祐君とトラブルを起こした人は、外されたようで来ていない)(確かに、失礼過ぎて、私たちも腹が立った)


その他には、平井恵子先生。

(あちこちの学者に根回しをしてくれたそうで、ありがたい)

(祐君は、秋山先生お気に入りの有望な学生を説明して)

(森田彰子先生の息子さん、森田哲夫さんの名前も出したとか)

(何より、元京大学長の森田大先生のお孫さんが効いた)

(旧弊な権威主義を重んじる古文学者連中の表情が、見事に変わったとか)

(わけのわからない学生の講演代読から、将来を託せる気鋭の新人に変化したらしい)


・・・その森田哲夫、彰子夫妻が入って来ました。

(今回の講演は、森田哲夫事務所も撮影で協力するとのこと)

その後ろに・・・秋山康先生(車椅子)と奥様の美代子様。(にこにこしている)


祐君の最後の練習が始まりました。

と言っても、今までの練習と変わらない。

実に淡々と読んでいる。

(声を張らないように、と指示されているので)

(喉が荒れるのを心配してのこと)

読み終わっての一礼も、キチンとした感じでOK。

客席から、拍手も出ている。

(祐君は表情を変えない・・・緊張が始まったかも)


森田哲夫夫妻を振り返ると、哲夫先生が彰子先生を抑えて、何かを話している。

要するに彰子先生は、楽屋に行きたいようだ。

(おそらく、母としての小言かな)

(でも、それは祐君が嫌なはず、余計な重圧になる)

秋山康先生も、彰子先生を止めている。

「充分です、僕より聴きやすい」

美代子夫人は、もっと彰子先生に厳しい言葉。

「母親でしょ?シャンとしなさい!」

彰子先生は、動きを止めた。(涙目だ)

(息子可愛さのあまり、心配で小言を言いたくなるのかな)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る