第304話森田瞳(祐の姉)の見解など

私は、森田瞳。

森田哲夫と森田彰子の長女にして、最近、忙しいフリをして、私の指示に従わない、小憎らしい森田祐の姉です。(そもそも、作者が私を悪者にし過ぎだ!と蹴りを入れたいところであるが・・・それは、後の楽しみにして)


とにかく、祐が連休に帰って来ないのが、気に入らない。

あんな軟弱弟は、とにかく身体を根本から鍛え直そうと思っていたから。(苦しいとかの泣き顔祐を叱りつけるのは快感だ・・・あとで、よしよしも・・・うん・・・いい感じ)


聞く話によると、秋山康先生、平井恵子先生、万葉集の佐々木先生にも気に入られたとか。

(祐は、不思議にお偉いさん親和力があるようだ)(私には通じないけれど)

その上、講演原稿の書き直し、古今の新現代語訳、万葉集社会人講座の資料下書きとか、仰せつかって高額なバイト料を貰っているようだ。(これも気に入らない、そういうことをやっているから、私にマウント取ろうとする・・・小憎らしい・・・まったく)


おっと・・・

周囲に、純子さん、真由美さん、朱里さんという、きれいな女性が侍っているようだ。(ありえん!あんなお子ちゃま祐に!)(・・・祐は美女親和力もあるけれど・・・子供の頃から)(何度も父さんの撮影で祐は、モデルさんにモテた・・・時々ハラハラするほど)

一度お会いして、「祐のアホさ、ひ弱さ」を出張講義しようと思ったけれど、それは、鬼母彰子に、止められた。

「瞳は、モテないから、ひがんでいるだけでしょ?」

「下手に瞳が行くと、祐はへこむ」

「大先生の仕事に穴ができる、私もそれは避けたい」


「私がモテない」とは、鬼母ながら認めがたいが、真実だ。

(言い寄られたことは、一度もない)

(アホ祐と比較して、神の不合理と不公平を嘆いている)


ジュリアの話は、恵美ちゃんを通して聞いた。

祐はお姉さんのように慕っているらしい。(それも、気に入らない)(こんなにやさしい姉には従わないのに)

確かにジュリアは、祐がお好みらしい。(これも、祐の美女親和力の関係かな)

いつも抱きしめたがるとか・・・それも不安。

祐に聞いたことがある。

「祐は、どう思うの?無理やりムギュされて」

「時々、モデルさんにも、されていたよね」


祐は、ボケた顏で、ボケた返事。

「うーん・・・何で、そうされるのかな」

「いきなりが多いしさ」

「香水が強いと、吐きたくなる」(実際吐いているのも、知っている)(祐は強い香料が苦手)

(父さんの京都の実家の着物の樟脳は、アウト・・・嗅いだ途端に頭痛が始まるらしい)


父さんの実家で思い出した。

祐は美女たちを連れて、京都の父さんの実家(森田家の本家)に招かれて、葵祭を見るようだ。(私も誘われたけれど、仕事中で無理だった)

実家は、荘平おじい様(元京大学長)、華子おばあ様(超美人だ、今でも)、超老舗料亭の当主正夫叔父様、奥様の公代叔母様が、祐を心待ちにしているらしい。

(子供がいないので、祐を跡取りに狙っているとか・・・危険だ)

(祐には、京都は似合わない、あの陰険な社会では、無理、可哀想だ)


ずっと祐のことを言って来て・・・読者は思うだろう。

「瞳さんは、ご自分が失恋したから、祐君のことを思うの?」


しかし、読者諸君、それは、間違いなのだ。

私は、決して失恋したわけではない。(フラれてはいないの意味ですよ!)

むしろ、私から、「三下り半」を叩きつけたのが、事実。

その理由は、「相手の器の小ささ」「世間の狭さ」「学識の低さ」だ。

何でも「静岡市第一主義で、他の市も県も国も、無頓着」

「森田哲夫も森田彰子も知らず、源氏も万葉も古今も教科書知識以下」

「雰囲気だけは、やさしいけれど、結局自分で方針を決められないマザコン男」

「家康を至上の人と言い切り、大河ドラマを夢中で見る」

「あれは小説のドラマ化で、そもそも史実とは違うのに、ちょっとした間違いで怒る」(NHKに文句の電話をするのだから。呆れ果てた)


・・・それを思うと、祐は立派なのかな。

筋は通すし、鬼母の言いなりには、ならない。(私のありがたい指示にも従わないけれど)

弱そうで、実は強いのも知っている。(もちろん、大ポカはある、根を詰め過ぎるから)


そんなことを思い続けていたら、祐の声が聞きたくなった。

夜の11時に電話した。

「祐、元気?」

「姉貴、大変だよ・・・もう嫌」(実感がこもっていた)

「どうかしたの?」

「愛奈が、超面倒」(うわ・・・実は祐の天敵だ)


「う・・・難しい、確かに愛奈は・・・」(いつも祐を見ると、追いかけ回していた、祐は嫌がって逃げ続けた)(私より、我がまま娘だ、半端ではないよ)

「でも、やさしくね、祐ならできる」(それしか方法はないよ、祐)


「うん・・・姉貴、ありがと」(なんか・・・ホロッとしてしまった)


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