第298話愛奈の社長の逮捕と、愛奈の転社

祐は、従妹の恵美から、「通報」を受け、ライブバーで知り合った弁護士の寺尾に連絡を取った。(文科省の審議会で、父森田哲夫、平井恵子と同じメンバーでもある)


「築地の料亭で、桜田愛奈が、トラブルに巻き込まれたようで」

「原因は、水着モデルのグラビアを愛奈が断ったこと」

「社長は、愛奈に張り手して怒って」

「愛奈のスマホを覗き見して、僕を呼び出すとか」


寺尾の反応は速かった。

「わかった、今、たまたまだけど、有楽町にいる」

「すぐに向かうよ」

「心配だから、知り合いの刑事も連れて行く」


その後、祐のスマホに「愛奈」で、電話がかかって来た。

しかし、その相手は、問題の社長だった。


社長は、いきなり祐を怒鳴りつけた。

「おい!お前が、祐って言うのか!」

「今から、場所を言うから、築地の料亭に来い!」


祐は、「弁護士と刑事が到着するまでの時間稼ぎ」を意識して、ぼんやりと返す。

「え・・・ところで・・・あなた・・・誰?」

「どちらさん?愛奈ではないよね、変な声のおっさん」

(心配して、祐監視のために、近くにいる純子と真由美は、笑っている)


すると、社長は、ますます激高。

「この小僧!なめた口を叩きやがって!」

「ただじゃおかねえぞ!」

「そもそも、てめえは、うちの愛奈に手を出したんだろ?」

「その代償を払ってもらうぞ!」


祐は、ますますとぼけた。

「どこの誰とも言わない人に、何を言えばいいの?」

「愛奈のスマホを盗んだだけの人?」

「要するに窃盗犯?」

(とにかく、祐の言葉がのんびりしているので、この時点で5分経過している)


社長の声がゆっくり、低くなった。

「おい、小僧」

「そんな返事でこの俺を誤魔化せると思うなよ」

「何なら、腕の一本、足の一本もらってもいいんだぜ」

「俺らの仲間には、そんなの何とも思っていない連中が、ゴロゴロいるぞ」

「そういう痛い目に遭いたくなかったら、とっととこっちに来い!」

(この時点で、10分経過)


祐の目に、純子と真由美のOKサインが見えた。

ゆっくり、のんびり、小馬鹿にするような口調。

「そんな・・・僕の心配する前に・・・ご自分の心配を」


社長が「何だと?」と大声を出した瞬間だった。


さらに大きな声が聞こえた。

「築地署の刑事です」

「芸能事務所社長、佐藤芳樹」

「婦女暴行の疑いで逮捕する」


社長の叫び声が聞こえて来た。

「おい!何だ!これは!」

「誰がチクった!」


しかし、その声も、すぐに聞こえなくなった。(警察に連行されたようだ)


弁護士寺尾から祐に連絡が入った。

「私が愛奈ちゃんを見守る」

「店での暴行の現場動画も、祐君への脅迫の録音もあるから、刑は確定する」


祐と純子、真由美がホッとしていると、父の哲夫から連絡が入った。

「祐、寺尾さんに連絡を取ってくれてありがとう」

「それから、愛奈は、俺が引き取る」

「森田哲夫プロダクションで、マネージャーも一緒」

「愛奈も、そうしたいとさ」


祐は、「はぁ・・・」と聞きながら、新たな困惑。

「また、夜間電話が増えるのかな」

結局、また深いため息をついている。

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