第120話純子と真由美は、それぞれに祐を思う。

私、純子は、いろいろと悩んでいた。

祐君の怪我には、動転した。

怪我をしてしまった祐君は、本当に痛々しかった。(見るなり、泣けてきた)

必死に病院やら何やら、明太子女と協力した。(私だけでやりたかったのが本音)

おそらく祐君は、私たちだと頼りにならないと思って、根を詰めてしまったと思う。

かの平井大先生からの難しい話(足手まといの私たちなんて、頼むのも面倒だったのかな)

だから、祐君も苦しんだと思った。


部屋をウロウロと歩いていて、風岡春奈が来て、祐君の部屋に入る様子も見ていた。(美人で可愛いから、祐君と二人きりでいるのが、辛かった、胸がドキドキして痛かった)

「もう・・・ダメかな・・・相手にされない人になるのかな」

「嫌だよ、そんなの・・・一緒に同じ大学に通って同じ学部なのに」

「祐君と通えるのが、生きる希望なのに」

「祐君の心は、春奈さんに?」

「これから泣くかな・・・お酒飲むかな」

「やけ酒?やけ食い?もう体型なんて知らない」

「・・・祐君のアホ!可愛いけど、アホ!」

「こんなに私が思っているのに・・・泣きたい・・・」


そんなことを思っていると、突然、スマホが光った。

愛しの祐君からだ。

「お願いします、時間あります?」

言葉の順番が変と思ったけれど、うれしかった。

スマホを掴んで、返事もしない。

そのまま祐君の部屋に。


祐君

「一緒に平井先生の家に行ってもらえます?」


「はい、任せて!」(声が弾んだ)


風岡春奈が、少々悔しそうな顔。(ふん!うるさい!祐君は私の祐君なの!)

ただ、祐君は明太子女にも頼んだようだ。

少し遅れて入って来た。(明太子女は泣き顔みたい、アセリ顔にも見えた)(私は、勝利感!)



私、真由美は、母に叱られていた。

もちろん、祐君の怪我の話。

「それだけの怪我って!」

「隣の部屋で、どうして気づかないの?」

「ほんとうにボケた女だよ」

「昨日も、叔父さんの森田義夫さんと立ち話」

「よろしくお願いしますって」

「それが、怪我なんて・・・」

母の話は、堂々巡り。

こういう時は、母もかなり感情的になる。


「うーん・・・」(気のきいた返事ができない、情けない)


「祐君のこと、好きなんでしょ?」(ここで核心を突いて来る、怖い母だ)


「うん」(泣けて来た、自分でもわからないくらいに涙が多い)


「支えなさい、支え合いなさい」(うん・・・もう、ボロボロ)


立って電話していたので、あの風岡春奈が祐君の部屋に入るのが見えた。

すごく焦った。(涙は止まり、足が震えた、祐君と二人きり?嫌だ、と思った)


「とにかく、落ち着いて、今は祐君が大変な時期なの」


「うん」(風岡春奈が気になって仕方がないので、生返事だ)


突然、スマホが光った。

祐君からだ。

「お願いします、時間あります?」


「母さん、祐君から呼び出し!」(恥ずかしいほど、声が弾んだ)


「涙くらい拭いてから!」(母は冷静に戻っていた、助かった)


しっかり顔を洗って拭いてから、祐君の部屋に入った。


祐君

「一緒に平井先生の家に行ってもらえます?」


「はい、もちろん!」(声が我ながら、恥ずかしいほどに大きい)


風岡春奈は、ため息をついている。(はぁ?意味わかんないけど)


純子さんも当然のようにいた。

その上、余裕顔。(ったく・・・気に入らん、でも、負けんよ、と思った)


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